[MOM4765]名古屋U-18FW大西利都(2年)_プロ野球選手だった父から「アスリートとしての在り方」を学ぶスピードスターが1試合2得点で勝利を呼び込む!

AI要約

名古屋グランパスU-18(愛知)のFW大西利都が神村学園高戦で2得点を挙げ、勝利に貢献した。

大西はスピードと得点力を武器にチームトップの6ゴールをマークし、リーグ戦で存在感を示している。

父親からの厳しい教えを受けながら、自己要求を高め、将来への野望に向かって成長を続けている。

[MOM4765]名古屋U-18FW大西利都(2年)_プロ野球選手だった父から「アスリートとしての在り方」を学ぶスピードスターが1試合2得点で勝利を呼び込む!

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]

[7.13 プレミアリーグWEST第8節 名古屋U-18 4-2 神村学園高 トヨタスポーツセンター第2グラウンド]

 常にプレッシャーは感じている。みんなを代表してスタメンで出ること。チームが繋いだボールをゴールに結び付けること。その責任は決して小さくないけれど、それはそういう立場にいるからこそ担えるもの。ならば、もう背負えるだけ背負ってやる。

「自分がスタメンで出ているからにはチーム全員の代表として出ているプレッシャーもあるんですけど、ピッチに立つ時には『自分が一番上手い』という気持ちで挑まないとダメだと思うので、『そういう気持ちを持たなきゃ』と自分にプレッシャーを掛けるような意識でやっています」。

 名古屋グランパスU-18(愛知)の最前線で躍動するスピードスター。FW大西利都(2年=名古屋グランパスU-15出身)はピッチに立ち続けることで多くの学びを自分の中に取り入れながら、さらなるステップアップを自身に課している。

「多くの観客だったり、学校の友だちも来ていたので、今日は気合の入り方はいつも以上に違う感じでした」。神村学園高(鹿児島)と対峙したプレミアリーグWESTの前半戦ラストゲーム。ホームに少なくない観衆を集めて行われた一戦のグラウンドに、大西は高揚感を持って足を踏み入れる。

 最初の決定機は試合開始直後に訪れた。前半2分。MF野中祐吾(2年)、MF八色真人(2年)、FW杉浦駿吾(3年)とスムーズに回ったボールが、足元に入ってくる。「駿吾くんからのワンタッチというのは練習中から共有できていたところだったので、あとは思い切り振り抜くだけでした」。左足で打ち切ったボールは、ゴールネットへ転がり込む。

「試合前から立ち上がりのファーストシュートの大事さは監督からも言われていましたし、チャンスが来る中で決め切る力というのはずっと課題だったので、今日はそこを意識した中で点を決められて良かったです。気持ちもメチャメチャ楽になりました」。早々にマークした貴重な先制点で、その持てる力はさらに解き放たれる。

 杉浦が追加点を奪い、2点をリードして迎えた23分。「相手に自分たちのプレッシャーが掛かっているなというのはわかっていました」という大西は、神村学園の最終ラインのビルドアップが乱れた瞬間を見逃さない。パスミスをかっさらうと、目の前にはターゲットが広がる。

「相手のパスミスだったんですけど、思ったよりファーストタッチで良いところにボールを置けましたし、足を伸ばしたら入るかなぐらいの感じで、ラッキーでした」。前半の早い時間帯でのドッピエッタ。13番のストライカーが大きな3点目を名古屋U-18にもたらす。

 最後は足を攣らせて後半29分に交代したものの、チームは4-2で打ち合いを制し、白星を手繰り寄せる。「プレミアでもクラブユースの予選でも複数得点は今までなかったですし、そこは監督からもチームメイトからも言われていたので、今日獲れたことは今後の自信にも繋がるかなと思います」。ようやく手にした“1試合2得点”で、大西は勝利の主役を鮮やかにさらっていった。

 リーグ前半戦は11試合中10試合にスタメンで登場し、杉浦と並んでチームトップタイの6ゴールをマーク。1年生だった昨シーズンのリーグ戦では8試合に出場して1得点だったことを考えると、グループの中での存在感を高めていることは間違いない。

 とりわけ裏へと抜け出すスピードと推進力は、プレミアでも十分通用する代物。「監督からも『オマエの特徴は背後へ動き出すことだったり、スピードで抜け出すことだ』というのは言われていますし、そこは自分の長所でもあるので、どんな相手でもそういうプレーを続けていきたいと思います」と自身でもその武器には自信を纏いつつある。

 一方でこれから改善すべき課題もしっかりと把握済みだ。「良い時と悪い時の差が激しくて、それは自分の課題でもあるので、常に良いパフォーマンスを出せるようなコンディションを整えないといけないなと。でも、フォワードは結果が大事なので、どんなに調子が悪かったとしても、ゴールを決めて結果を出すだけかなと思います」。ストライカーとしての覚悟も定まっている。

 家族からもアスリートとしての在り方を学んできた。大西の父はプロ野球選手として中日ドラゴンズや読売ジャイアンツでもプレーし、現在は中日の1軍外野守備走塁コーチを務めている大西崇之さん。本人は「小さい頃は野球もかじっていたんですけど、兄が野球をやっていたので、比べられるもの嫌だなと思って、自分はサッカーを選びました」とのことだが、プロのシビアな世界を生き抜いてきた父からは、オフ・ザ・ピッチの大切さを強調されているという。

「お父さんはサッカーは知らないので、技術面のことは何も言ってこないですけど(笑)、プロで野球をやっていたからこその厳しさはあるので、メンタルの部分だったり、人としての行動という部分については、いつも言われています」。偉大な父には言葉やその背中で見せる姿勢から、サッカー選手である前に、1人の人間としてどうあるべきかをしっかりと教えられてきた。

 新たなステージへと足を踏み入れつつあるからこそ、ここからはさらなる自覚が求められるフェーズ。だが、そんなことは自分が一番よくわかっている。「僕は(貴田)遼河くんを目標にしているので、そこに追い付くのではなくて、追い越すぐらいの勢いでやっていかないと、やっぱりトップ昇格は見えてこないと思いますし、今の調子を続けるのではなくて、ここからも人一倍意識を変えてやっていきたいと思います」。

 若鯱のアタッカー陣に台頭してきた、しなやかなナンバー13。ストライカーとしての才覚を発揮し始めた大西利都が披露する、ピッチを駆け回るスピードと、ここから加速させていく成長のスピードには、目を凝らして注視していく必要がありそうだ。

(取材・文 土屋雅史)