国産の“次世代フォーミュラカー”製作を公表した日本自動車レース工業会に聞く。既に空力設計に着手……目指すはスーパーフォーミュラでの採用か?

AI要約

日本自動車レース工業会(JMIA)が新たなフォーミュラカーの開発に着手することを発表。

JMIAは高性能マシンを開発するための土台を固めており、2027年か2028年に実戦投入を目指す。

車両の開発は現在進行中で、最終的な完成目標は秋口に車両を完成させることで、実走行テストを経て競技参入を果たす予定。

国産の“次世代フォーミュラカー”製作を公表した日本自動車レース工業会に聞く。既に空力設計に着手……目指すはスーパーフォーミュラでの採用か?

 先月、興味深いニュースが飛び込んできた。モータースポーツに関わる多くの企業が加盟する特定非営利(NPO)法人の日本自動車レース工業会(JMIA)が、「『TOP FORMULA』に位置づけられる『NEXT-FORMULA』に挑戦するため、そのコンセプトカーの開発に着手する」と発表したのだ。

「技術とレース産業を育成することにより日本の自動車レースの発展振興を図る」ことを目的として2008年に発足したJMIAは、加盟企業の手によってこれまでに多くの国産レーシングカーを生み出してきた。スーパーGTのGT300クラスで採用されるマザーシャシーやFIA F4の第1世代車両などもそれにあたる。また今季から採用されたFIA F4第2世代車両『MCS 4-24』も、シャシーは東レ・カーボンマジック製となっているが、実状としては同社を主体にしつつ様々なJMIA加盟企業が供給するパーツによって構成されている。

 そんなJMIAが、新たにフォーミュラカーを開発することを明らかにした。ただそもそもの話として、「『TOP FORMULA』に位置づけられる『NEXT-FORMULA』に挑戦する」という表現はやはり気になるところ。東レ・カーボンマジックの社長でJMIAの副会長でもある奥明栄氏はmotorsport.comの取材に対し、まだ車両が完成していない上に、レースでの採用が既に決まっているわけでもないため、具体的にどのカテゴリーをターゲットにした車両なのかについて明確に言及することはしなかった。しかし情報を総合するに、日本のスーパーフォーミュラでの採用を目指しているのではないかと思われる。

 なお車両のコンセプトについてはプレスリリースの中で「基幹部品の純国産化/日本発のデザイン」、「高い運動性能/最新の安全性能」、「最新の環境性能/エンタメ性考慮」、「適正な車両価格/安定した部品供給」の4項目が挙げられている。

 JMIAはこれまでF4やフォーミュラ・リージョナルといった車両を開発・製造したことで、トップフォーミュラに位置する高性能マシンを開発する上での“土台”を固めてきた。「設計もそうですが、部品を供給するメーカー群、を整備しないといざという時にできないですから(奥氏)」とのことだ。

 また奥氏によると、このコンセプトカーは既にCFD(計算流体力学/コンピュータシミュレーション)による空力設計に取り掛かっており、今後は風洞実験なども行ない、年内に設計を終わらせることを目標としているという。来年2025年にはモノづくりに取り掛かり、夏頃に組み立てを行なって秋口に車両を完成させ、そこから実走テストを行なう算段だ。

 実走行テストの期間を考慮すると、このJMIA製車両の実戦投入の準備が整うタイミングは2027年、もしくは2028年あたりと推察される。スーパーフォーミュラは昨年、新車両の『SF23』を導入したばかりだが、同シリーズが4~5年のサイクルで車両を刷新していることを考慮しても、スーパーフォーミュラの車両変更タイミングと一致する可能性は大いにあり得る。

 現在は、JMIA加盟企業が本職と並行しながら、それぞれのリソースを持ち寄りながら開発を進めている状況だが、車両開発の技術面を取り仕切る奥氏は「やっぱりみんなやりたがるんです。それ(熱意)だけで持っているようなものですよね。これを逃すと、そんな経験は一生できない可能性が高いですから」と語った。その進捗が大いに注目されるプロジェクトと言えるだろう。