“結婚したくない趣味の上位“のトライアスロン 夫婦共通の趣味としてトライを/加藤友里恵

AI要約

トライアスロンは過酷な競技だが、挑戦者たちはポジティブな姿勢で取り組んでいる。

トライアスロンを始めることで仕事や私生活にポジティブな変化が現れ、自信ややりがいを感じることができる。

挑戦者たちは目標を定め、努力を重ねることで新たな自分に出会える喜びを感じている。

 みなさんはトライアスロンと聞いて、どんな印象があるだろうか?

 私はやり始めた頃、『過酷なスポーツ、よくやるね!』『つらくないの?』と言われていた。

 私自身、得意なスポーツが集結したのがトライアスロンだったので、トライアスロンをはじめて知った小学生の頃(1990年代後半)から『将来の夢はトライアスロンでオリンピックに出ること』とひそかに思っていたのだ。

 競技としてのトライアスロンは、正直なところ練習時間も長く、練習以外にやることと言えば寝るか食べるかという生活だった。

 辛いか?過酷か?と言われたら、『辛い…過酷…』と言いそうな、そういう局面もあるが、『好き』という気持ちのが勝るので、辛さは感じることはなかった。

 と言いつつも、トレーニングは長い日では1日8時間は身体を動かしていたのでハードな競技には間違いない。

 トライアスロンという競技を通して、私生活やその後の人生に生かされているなという面は多々ある。1日におけるタイムマネジメントや目標設定の大切さ等も身をもって学ぶことができたし、精神面でも成長を感じることもあった。

 現在、微力ではあるがこの経験を生かしてトライアスロンの普及のためにチームをつくり【トライアスロンのはじめの一歩】や【技術面向上】のために働きかけている。その中で、感じるのは趣味としてトライアスロンをやっている方々のすごさだ。

 それこそ、過酷なスポーツを趣味にする方々はどのようにしてトライアスロンを選んだのか。また、トライアスロンをはじめたことによる私生活や仕事面でプラスの効果はあったか?

 57歳でトライアスロンに挑戦した女性の方は、『人生で一度はチャレンジしてみたい!』という志しで挑戦した。

 実に水泳は小学生ぶり。それを聞いた私は計算した。『…ん?45年ぶりにおよ…ぐ。』(笑い)

 トライアスロンに挑戦している方の中では、大体いずれかの種目の経験者が多いが、経験したことのないスポーツをゼロから、しかも60歳を目前としてはじめるのには相当な勇気が必要だと思う。ロードバイクもはじめて乗るし、海で泳ぐのもはじめて。結果、挑戦を決意した年にスプリントディスタンスを完走し、来月はさらに長いオリンピックディスタンス超えの距離に還暦を迎えて挑戦する。

 私のところに来られる方は、『海が怖いのでトライアスロンに挑戦できない』という方が多くいる。確かに海は少しでも恐怖心があると、プールでは平気だけれども海だと泳げなくなる。そのような方々に海を克服してもらうことも私の役目だ。

 ある女性は海で潜ることが怖くはじめの方は震えていた。まずは恐怖心を除くためのアプローチをし、徐々に慣れていくトレーニングを行う。結果、怖かった海を克服しトライアスロンデビューを果たし、今やフィンスイミングのマスターズ大会に出場をして、世界選手権に出られるか?というところまで泳げるようになったのだ。

 他にも意を決して64歳でトライアスロンをはじめた方や、6年前にバイクを買ったけどなかなかはじめる勇気がわかなかった方など老若男女問わず挑戦する方と出会うことができた。

 『知人がトライアスロンをやっているのを見て、その人がどういうトレーニングをしてるか聞いたりしていたら、【これだけ達成感をわかりやすく感じられるスポーツはない】と思ったのではじめました』という方もいる。

 トライアスロンの距離もスプリントからアイアンマンまでさまざまあり【自身を進化される趣味】としても適していると話す。

 その方々の共通点は、みんなポジティブなことだ。『海が怖い』とか、『完走できるか不安』と言いながらも、それを克服するために、自分自身の目標を掲げて達成するために努力することだ。

 メンバーのみなさんにトライアスロンをはじめてどのようなプラスの効果が得られたか尋ねてみた。

 <1>トライアスロンに挑戦して、私生活や仕事は変化しましたか?

 ・トレーニングの時間を確保するために仕事を効率よくこなせるようになった。結果的に仕事を終わらせるようになった。

 ・時間の使い方がうまくなった。例えば隙間に練習を入れる。雨の日はローラー台、スイムまたはジムでトレッドミルでウオーキング、筋トレなど。自分にとって大きかったのは休養をする事。仕事と練習と休養のメリハリがつくようになった。

 ・練習や大会の準備に想像力を働かせるので(移動、天候、レース展開、補給、アクシデントへの対処など)仕事、私生活での決断、判断が良くなった。

 ・仕事と私生活のメリハリがつけられるようになり、心が穏やかになった。

 <2>カラダやメンタル面は変化しましたか?

 ・カラダやメンタルは自信がついて、困難に直面しても以前より動揺せず対処できるようになった。

 ・対人援助の仕事でマイナス思考の話を長時間聞くことがあり、私生活にも引きずることがあったが、会社を出たら切り替えられるようになった。

 ・けがが多く不安だったが練習の具体的な目安(タイム設定など)を教えて頂き練習することでけがが減り、不安感が少なくなった。

 <3>目標も持つことでやりがいや生き甲斐などは感じますか?

 ・最初は無理だと思っていた目標に一歩ずつ近づいている実感があるときや出来なかったことができるようになった時。

 ・目標を定めて練習を行い、その練習が終わると心身ともにスッキリしている。スポーツはココロもカラダも健康にしてくれる。

 ・トレーニングの時間が増えたのでお酒を飲みに行かなくなり、酒量が大幅に減った。(笑い)健康的な生活を送ることで気持ちも安定し、一緒に練習する仲間がいることで楽しみながら頑張れる。こういうことがやりがい、生き甲斐なのだと感じる。

 このような声を聞いて、トライアスロンがもたらすプラスの効果は十分にあると感じたし、やはりトライアスロンをやる方はポジティブだなと改めて実感した。

 ちまたでは【結婚したくない趣味の上位】ではあるが(笑い)、それならば共通の趣味として一緒にトライしてみてほしい。きっと新たな自分に出会えるはずだ。

 (加藤友里恵=リオデジャネイロ五輪トライアスロン日本代表)