ビーチの貝殻、持って帰らないで

AI要約

ビーチから貝殻を持ち帰ることの影響について、IFLSの報告と研究結果を元に解説。

貝殻が生態系に与える影響や、観光客による貝殻収集の減少率の実例を示す。

世界各国での貝殻持ち帰りの法律や、日本においては管轄によってルールが異なることについても触れられている。

ビーチの貝殻、持って帰らないで

ビーチの楽しい思い出として貝殻を持って帰ることはないですか。でも、やめた方がいいかも。

というのも、IFLSによると、ビーチから貝殻がなくなることで「重大な損害」が発生したり、貝殻に依存する多くの生物に影響が出るらしいのです。

ビーチに無造作に落ちている貝殻ですが、実は砂浜を安定させたり、鳥の巣作りの材料になったり、藻類や海藻、スポンジ類、甲殻類といった海洋生物の住処や付着面になったりして役立っています。

それだけでなく、貝殻は炭酸カルシウムの供給源にもなっていて、海水に溶けて海洋に循環されているんです。

そんな貝殻がビーチからなくなったら何が起こるのでしょう。

まず、ヤドカリの棲家がなくなってしまいます。

さらに、小さな生物が貝殻に定着しているので、それら生物の生息地も消えます。

スペインのジャルガビーチで1978年~1981年と2008年~2010年の間に複数回にかけて行なわれた調査によると、観光客が増加した期間は、貝殻が最大で約60%も減少していることがわかったそうです。

フロリダの博物館で主任研究者を務める古生物学者のミハル・コワレフスキ氏は次のように語っています。

「浜辺の漂流物収集や貝殻収集といった、一見すると無害な行動が、生息地を大きく変化させる役割を果たす可能性があります。観光関連の活動が沿岸生息地に与える影響について引き続き調査する必要があります」

ちなみに、貝殻の持ち帰りを法律で禁止している国もあります。

たとえば、イギリスではCoast Protection Act 1949によって公共の場であるビーチから天然素材を持ち帰ることが禁止されています。

アメリカでは特定の種が保護されていて、生きた貝殻の採取は罰せられる可能性があります。空になった貝殻は許可されているみたいですが、見ただけでは空なのか見分けがつかない貝もいるので注意が必要でしょう。

2018年にはフロリダのビーチで貝殻を40個持ち帰った女性が15日間も投獄され、500ドルの罰金支払いを命じられています。彼女が採取した貝殻の中に絶滅危惧種に認定されている女王貝が含まれていたことも原因なのだとは思いますが、貝殻拾いでこの罰は重く感じます。

日本では管轄ごとにルールが異なる

なお、日本の海岸で貝殻を拾っていいかどうかは管轄によって判断が異なります。海岸そのものは国の保有になりますが、各市町村が漁港管理していてルールは個々に異なるため、一概に「ダメ」とは言えない状況になっています。

基本的に個人が趣味で拾う範囲なら問題ないけれど、転売目的で大量収集はいけません。収集の量など、明確なルールを知りたい場合は海岸を管理している役場などに問い合わせてみるといいでしょう。

ちなみに、夏の人気イベントである潮干狩りは、地域の漁業協同組合の管理下で行なわれているそうなので、心置きなく楽しめそう。

法律の話を持ち出してしまうと、国によって考え方が異なるので一概に「貝殻を持って帰ってはダメ」と言えないのですが、貝殻を持って帰ることで生態系に影響が出てしまうのは頭の片隅に置いておくといいかも。そうしたら、日本で少し採取しても、生態系における貝殻の役割を思い出しつつ大切に保管できるのではないでしょうか。

Source: IFLS