じつは、漢方薬は「日本固有」の伝統医学…意外と知らない漢方薬のルーツ

AI要約

漢方薬の英訳はKampo medicineと言われ、日本固有の伝統医学であることを世界にアピールするために使用されている。歴史を振り返ると、漢方薬は中国を起源とする伝統医学であり、日本や韓国でもそれぞれの文化に合わせて独自の発展を遂げてきた。

漢方薬が日本固有の伝統医学であることをアピールするため、Kampo medicineという英訳が用いられている。米国国立医学図書館が運営するPubMedでもKampoが医学用語として正式に登録され、多くの論文が収載されている。

漢方薬は5世紀から6世紀にかけて日本に伝来し、朝鮮半島や中国からもたらされた。これらの背景から日本、中国、韓国でそれぞれ異なる医学体系や薬剤が使用されている。

じつは、漢方薬は「日本固有」の伝統医学…意外と知らない漢方薬のルーツ

 私たちにとって身近なツボや鍼灸、漢方薬。近年、そのメカニズムの詳細が西洋医学的な研究でも明らかになってきています。例えば「手のツボが便秘改善に効くとされるのはなぜ」「ツボに特徴的な神経構造が発見された?」「漢方薬が腸内細菌のエサになっている?」など、興味深い研究が数多く報告されているのです。最新の研究では一体どんなことが明らかになっているのでしょうか。

 そんな東洋医学のメカニズム研究の最前線をとりあげた一冊、『東洋医学はなぜ効くのか』(講談社ブルーバックス)から注目のトピックをご紹介していきます。今回は、多くの人に馴染みの深い「漢方薬」の意外なルーツをご紹介します。

 *本記事は、『東洋医学はなぜ効くのか ツボ・鍼灸・漢方薬、西洋医学で見る驚きのメカニズム』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。

 漢方薬の英訳を知っていますか。漢方薬の英訳はKampo medicineと言います。多くの方は既にご存知かもしれません。

 そもそも「漢方」という名称は、江戸時代中期にオランダから新たに入ってきた医学を「蘭方」と呼び、それまで日本で主流だった医学を「漢方」(中国の漢に由来)と呼ぶようになったことから始まったとされています。

 中国を起源とする伝統医学では、自然界に存在する植物、動物、鉱物などの薬効となる部分(生薬)を複数組み合わせて病気の予防や治療に利用してきました。

 歴史を振り返ると、この伝統医学は、5世紀から6世紀にかけて、朝鮮半島を経由して日本にもたらされ、遣隋使や遣唐使の時代には中国からも直接持ち込まれるようになりました。その後、日本国内の風土や気候に合わせることで独自の発展を遂げてきたのです。

 起源は同じであるものの、それぞれの国で異なった医学体系を形成しているため、日本、中国、韓国で、それぞれ「漢方医学」「中医学」「韓医学」と区別して呼ばれ、用いられる薬剤も「漢方薬」「中薬」「韓薬」と対応した名称があります。

 このような背景を踏まえ、漢方薬の英訳がKampo medicineである理由のひとつに、漢方薬が日本固有の伝統医学であることを世界にアピールするため、戦略的に使い始めた経緯もあります。

 なお、米国国立医学図書館が運営している医学論文データベースのPubMedにおいてもKampoは2000年から正式に医学用語として登録されており、収載されている論文数も2000報を超えています(2024年1月現在)。

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