その間隔わずか約300光年 近接した超大質量ブラックホールのペアをハッブル宇宙望遠鏡が観測

AI要約

活動銀河「MCG-03-34-064」の中心には、300光年程度の距離でペアを組んだ超大質量ブラックホールが存在することが明らかになった。

研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡などで観測された3つの明るい光点のうち2つが超大質量ブラックホールを原動力とする活動銀河核だと結論付けた。

最後の1つの光点はブラックホールのジェットに衝突された可能性があり、正体がはっきりしていない状況だ。

その間隔わずか約300光年 近接した超大質量ブラックホールのペアをハッブル宇宙望遠鏡が観測

こちらは「おとめ座(乙女座)」の方向約2億3000万光年先の活動銀河「MCG-03-34-064」です。画像は「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope: HST)」の「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」で取得したデータをもとに作成されました。背景はMCG-03-34-064の全体像で、右上に重ねられているのは銀河の中心部分を拡大した画像です。

ほとんどの銀河の中心には質量が太陽の数百万倍~数十億倍もある超大質量(超巨大)ブラックホールが存在すると考えられていて、なかには2つの銀河が合体したために超大質量ブラックホールがペアを組んでいることもあります。

ハッブル宇宙望遠鏡を運用するアメリカの宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)によると、MCG-03-34-064の中心にも超大質量ブラックホールのペアが存在することが明らかになりました。その間隔はわずか300光年程度で、これまでに確認された超大質量ブラックホールのペアとしては最も近接しているといいます。銀河の合体がひんぱんに起きていた初期の宇宙では、こうしたペアがより一般的だった可能性が高いと考えられています。

ハッブル宇宙望遠鏡のACSで観測されたMCG-03-34-064の中心部分には3つの明るい光点が確認できます。ハーバード・スミソニアン天体物理学センター(CfA)のAnna Trindade Falcãoさんを筆頭とする研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡、X線宇宙望遠鏡「チャンドラ(Chandra)」、アメリカ・ニューメキシコ州の「カール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群(Very Large Array: VLA)」で取得されたデータを分析した結果、そのうち2つは超大質量ブラックホールを原動力とする活動銀河核(※)だと結論付けました。最後の1つの光点は正体がはっきりしておらず、ブラックホールの1つが放出したジェットに衝突されたガスの可能性があるようです。

※…銀河中心部で強い電磁波が放射されている狭い領域。Active Galactic Nucleus: AGN。ブラックホールに引き寄せられた物質がらせんを描くように落下していく過程で形成した高温の降着円盤から、可視光線やX線といった強力な電磁波が放出されていると考えられています。