40代の孤独、どう乗り越える? 「仕事以外の役割持って」と専門家

AI要約

35~64歳のミドル期世代も、孤独というリスクにさらされている。

女性の社会的プレッシャーに抗い、自分のペースで充実した生活を模索する40代のエピソード。

ミドル期人口のシングル率が増加する中、行政や地域社会が支援をする必要性がある。

40代の孤独、どう乗り越える? 「仕事以外の役割持って」と専門家

 高齢者だけでなく、都心でひとり暮らしする35~64歳のミドル期世代も、「孤独」がもたらすリスクにさらされている――。社会学者で放送大学名誉教授の宮本みち子さんは、こう指摘する。リスクを減らすには、何が必要なのか。

 今年40歳になった女性は20代のころ、「女子力」や結婚を求める社会に生きづらさを感じていた。30代に入り、友人が次々に結婚すると焦りも抱いた。だが、彼女たちを見送るうちに、「もう自分は『土俵』から降りたんだ」と、気持ちが楽になっていったという。

 今は無理に結婚や子育てする人生を求めず、自分のペースで充実した生活を楽しんでいる。ただ、ふとした瞬間に孤独や将来への不安がよぎることもある。自身の老後に備えつつ、困窮家庭の子どもたちへの寄付も始めた。40代の孤独をどう乗り切るか考えながら、新しい生き方を模索していると話す。

 宮本さんによると、東京区部ではミドル期人口の3割弱がシングルで、この数は今後も増えると予想されているという。

 一方で行政は、現役世代をリスクを抱える政策対象と見ていないため、この層への支援が抜け落ちていると指摘。地域から孤立し、将来に不安を抱える人が増えている現実に目を向けるべきだと話す。

 宮本さんらは、東京23区にかかわる課題について考える特別区長会調査研究機構のプロジェクトで、この層への調査を実施。約2600人のシングルの生活と意識を明らかにした。

 とくに女性の中に「今のままでは老後の貯金がなく、家賃も払えなくなるのではないか」といった不安を訴える人が少なくなかったという。また、ひとり暮らしは孤立・孤独の問題を抱えやすいが、その傾向は男性でより顕著だったという。

 「仕事があり、友人がいて、親も元気なうちは、社会からの孤立や孤独をあまり感じないかもしれません。でも、それを維持できなくなったときにどうするかを前もって考えておく必要があります」

 解決策の一つとして、結婚という形を選ばなくても、それに代わる「親密圏」をつくることを提案する。

 街づくりのあり方も変える必要があるという。そこへ行けば顔見知りの人がいて、ちょっとした言葉を交わすことができるような場があちこちにあれば、孤独に陥る人は減るのではと話す。

 「仕事以外の役割を持ち、どこかに飛び込んでみる。そこで何か言葉を交わしてみる。勇気をもって助けを求める。まずは行動を起こすことが大事だと思います」(編集委員・岡崎明子、山本悠理)