子宮頸がんなど防ぐHPVワクチン 「知らなかった」で後悔してほしくない

AI要約

HPVワクチンのキャッチアップ接種の期限が迫り、3回の接種を完了するためには9月中に1回目の接種が必要

一時は接種の呼びかけが中止されたが、安全性が確認され接種件数が増加中

HPVワクチンを接種した人のデータを公開し、他の人を勇気づける取り組みが行われている

子宮頸がんなど防ぐHPVワクチン 「知らなかった」で後悔してほしくない

子宮頸がんなどを防ぐHPVワクチンのキャッチアップ接種の期限が迫っています。3回の接種を理想的なスケジュールで完了するためには9月中に1回目の接種が必要です。一時、積極的な接種の呼びかけが中止されていたため「打つのは怖い」と感じている人もいるかもしれません。そんな不安を解消する一助になればと「みんな意外と打ってるんだ」を可視化した小児科医がいます。“マザーキラー”とも呼ばれる子宮頸がん。「旦那さんとお子さんを残して天国に行ってほしくない」――勝田友博准教授(聖マリアンナ医科大学小児科)と伊藤秀一主任教授(横浜市立大学大学院医学研究科 発生成育小児医療学)の緊急インタビュー。

子宮頸がんなどを防ぐ効果があるヒトパピローマウイルス(以下、HPV)ワクチン。日本では現在、小学校6年~高校1年の女性を対象に定期接種が行われています。しかし、一時、積極的な接種の呼びかけが中止されていたため、接種の機会を逃した一部の年代の女性に対する無料の接種である“キャッチアップ接種”が実施されています。

小児の感染症とワクチンの専門家である勝田友博准教授は「キャッチアップ接種は来年(2025年)3月末まで。HPVワクチンは決められた間隔をあけて3回の接種が必要で、完了まで6か月かかります。1回目を今年(2024年)9月中に打たないと間に合わないのです」と切迫した表情で話します。

HPVワクチンをめぐっては接種後に体調不良を訴えた人が相次いだことなどから、一時、積極的な接種の呼びかけが中止されていました。しかし、その後の調査で、副反応と疑われた“多様な症状”はワクチンを接種していない人たちにも同じ頻度でみられることが明らかとなり、HPVワクチンが原因ではないことが確認されました。

「『それでも、やっぱり打つのが怖い』と感じるのは自然な感情です。だから、実際にHPVワクチンを接種した人のデータを確認できるサイトを作りました」と勝田准教授。

日本小児科学会神奈川県地方会が神奈川県産科婦人科医会と協力して作成しているwebサイト*では、県内のHPVワクチンの接種状況がリアルタイムに更新されています(神奈川県HPVワクチン接種状況:https://kanagawa-hpvgraph.azurewebsites.net/)。

* 神奈川県内でHPVワクチンを接種している医療機関のうち研究への協力が得られた56施設から、2018年1月1日以降にワクチンを接種した患者の情報(年齢、性別、ワクチン接種を希望した理由、接種直後の状況など)を収集している(2027年3月31日までの予定)。過去の接種情報が得られる場合は遡っての登録も推奨している。

先月(2024年8月)の接種件数は364件と、調査開始以来もっとも多くなりました。キャッチアップ接種の期限が迫っているため、駆け込みで接種する人が急増しているのだといいます。

同サイトでは、接種者一人ひとりの「接種希望理由」(何をきっかけに接種しようと思ったのか)、「接種直後の状況」(接種した直後の体調)が公開されています。勝田准教授は「『お友達が打った、隣のお姉さんも打った』と聞くと、『みんな意外と打ってるんだ……自分も打とうかな』と思ってもらえるのではないでしょうか。正しい情報を得たうえで判断してほしい。『知らなかった。有料**だから打てなかった』は避けたいのです」と話します。

** キャッチアップ接種の期限を過ぎ、自費でHPVワクチンを接種する場合、医療機関により異なるが、3回で10万円程度の費用がかかる(9価ワクチンの場合)。