世界が字幕付きで見える「字幕共感覚」、持ち主の「特異な脳」の仕組みとは──声が大きければ「太字に」、理解できない言語は「nnnnn…」

AI要約

「字幕付き」で世界が見える特異な脳を持つ人々が存在する。この特殊な脳を持つ人たちは、話す言葉や聞く言葉が脳内で文字起こしされる能力を持つ。

ジャーナリストのカロリーヌ・アンドリウもその一人で、45歳頃に自分の脳が普通の人とは異なることに気づいた。共感覚を持つ人々にとって「字幕共感覚」は独特な経験であり、音の大きさや言語によって文字の見え方が変化する。

共感覚を持つ人々は、一般的に特定の音や数字に色が結びつくなど、複数の異なる感覚が自動的に結びつく。ただし、共感覚は一部の人々にしか見られない珍しい状態であり、その割合は明らかにされていない。

世の中には、世界が「字幕付き」で見える人がいる──。もしかしたら、この記事を読んで初めて自覚する人もいるかもしれない。特定の音や数字、色が脳内で結びつく「共感覚」の一種とされ、「ティッカーテープ共感覚」とも呼ばれる、この特殊な脳を持つ人は、話す言葉、聞く言葉、想像する言葉がすべて脳内で「文字起こし」されるのだという。

自分の脳が「普通の人とは違う」ことにカロリーヌ・アンドリウが気づいたのは、かなり歳を重ねてから──45歳頃のことだった。だが、これはカロリーヌと同じ特異な脳を持つ人のあいだでは、さほど珍しい話ではない。

パリ在住のジャーナリストであるカロリーヌは言う。「以前は、他の人も私と同じように、人の話を聞きながら字幕が見えているのだと思っていました」

どうやらそうではないと気づいたのは2018年。仕事で編集を担当した記事で、世の中にはこんな独特な脳を持つ人がいると紹介されていたのを読んだのがきっかけだった。

ずいぶん幼い頃から、人が話した言葉が自動的に文字として書き起こされて見えた。「文字を習う前から、誰かが話すと、頭のなかで猛烈な勢いで文字が連なっていったのを覚えています。その頃は、それが何なのかがまったくわからなかったので、不安を強く感じました。でも、文字を習ってからは、一気にすべてがわかるようになり、すっきりしました」

カロリーヌは、珍しいタイプの「共感覚」の持ち主だ。一般的に、共感覚を持つ人は、特定の音や数字に色が結びつくなど、複数の異なる感覚が自動的に結びつく。これは脳の状態であり、疾患ではない。一部の人にとって、「A」という文字はつねに赤色に見え、別の人には数字の「8」が青色だったり、赤色だったりする。共感覚の持ち主は人口全体の数パーセントだと大雑把に言われているが、それ以上細かい割合は明らかになっていない。

カロリーヌは、「字幕共感覚」の持ち主だ。電話で喋るときと対面で喋るときでは、脳内に表示される字幕の書体が変わる。声が大きければ「太字に」なり、声の音量が大きくなったり、小さくなったりすれば、それに応じて「字幕も波の形状を示す」という。理解できない言語、たとえば中国語などを聞くとどうなるかといえば、nの字が延々と続く。そして「そのnは、つねにイタリック体」なのだそうだ。