国内初の使用済み核燃料中間貯蔵施設、来月にも稼働 エネルギー安全保障確保に期待 深層リポート

AI要約

青森県では、中間貯蔵施設(RFS)の安全協定が締結され、核燃料の搬入が始まる見通しとなった。しかし、使用済み核燃料再処理工場の操業は未定のままであり、エネルギーの安全保障には引き続き取り組む必要がある。

青森県やむつ市は国策に協力し、中間貯蔵施設の立地や運営を通じて国のエネルギー政策に貢献している。これにより、地域の財政基盤もしっかりとした形で整備されている。

地方自治体や事業者にとっては、原子力関連の施設や事業が財源となる一方で、安全確保が大きな責務となっている。合意を尊重しつつ、安全対策を着実に進めていく必要がある。

国内初の使用済み核燃料中間貯蔵施設、来月にも稼働 エネルギー安全保障確保に期待 深層リポート

資源小国のわが国にとって、原子力を有効に活用する国策の核燃料サイクル事業確立に向け、一歩前進と言っていい。使用済み核燃料を原発敷地外で一時的に保管する国内初の中間貯蔵施設(青森県むつ市)を運営するリサイクル燃料貯蔵(同市・RFS)と県、市が今月9日、事業開始の前提となる安全協定を締結したことで9月にも核燃料の搬入が始まる見通しとなった。一方で、貯蔵後の搬出先とされる日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(同県六ケ所村)はいまだに操業のめどが立っていない。電気料金の高騰が家計を直撃する中、改めて国、事業者はエネルギーの安全保障に真摯(しんし)に取り組む必要がある。

■国策への協力

「日本のエネルギー政策に貢献する。この一点に尽きる」。協定締結後の会見で中間貯蔵施設の意義を問われた宮下宗一郎知事は強調した。

青森県は核燃料サイクル施設(六ケ所村)をはじめ、東北電力の東通原発(東通村)、電源開発の大間原発(大間町)といった原子力関連施設が集中立地する、全国でも稀有(けう)な自治体だ。宮下知事の発言の裏には国策に協力している立場を強調することで、国のエネルギー政策に対してイニシアチブを得る姿勢が垣間見える。

■税収で原子力と共存

原子炉等規制法の改正で使用済み核燃料が原発施設外で貯蔵可能となったことを受け、むつ市がRFS親会社の東京電力に対し、中間貯蔵施設の立地可能性調査を依頼したのは平成12年11月。背景にあったのは交付金による財政赤字からの脱却だった。翌13年から調査がスタートし、昨年度までの総額は200億円以上に上り、さまざまな施策に活用されている。事業開始後は年間15億円の交付金に加え、ウラン1キロ当たり620円の税収も見込める。「20年以上経ってようやく(安全協定)締結。この事業の判断が正しかったと言えるよう防災対策、地域振興に取り組んでいく」。山本知也市長は先人に思いをはせながら、交付金を活用した財政基盤の確立に取り組む姿勢を強調した。

一方、県も使途に縛られない法定外普通税の核燃料物質等取扱税条例を改正し、むつ市と同額を課税。今後、5年間で約2億5600万円の税収を見込んでいる。〝原子力マネー〟依存の行政運営に批判的な意見はあるが、財政基盤が脆弱(ぜいじゃく)な県、同市にとっては貴重な財源となっているのは紛れもない事実。だからこそ国、事業者は安全確保を大前提に事業を着実に進める責務がある。