「エムポックス」はどう広まる? WHOが「緊急事態」を宣言、致死率の高いウイルスが流行

AI要約

アフリカでのエムポックスの流行が世界的な懸念を引き起こし、WHOが緊急事態を宣言した。コンゴ民主共和国を中心に感染者数が急増し、近隣諸国にも広がりが懸念されている。

エムポックスは天然痘と同じオルソポックスウイルス属のDNAウイルスで、症状は発疹、リンパ節の腫れ、発熱などが現れる。現在の大流行を引き起こしているのはクレードIで、特に子どもが影響を受けやすい。

エムポックスは人獣共通感染症で、初めてヒトに感染が確認されたのは1970年。アフリカの西部や中央部での感染が主に報告されている。

「エムポックス」はどう広まる? WHOが「緊急事態」を宣言、致死率の高いウイルスが流行

 アフリカでのエムポックスの流行を受け、世界保健機関(WHO)は国際保健規則(IHR)に基づく緊急委員会を開催した。コンゴ民主共和国では、2024年に入ってからの患者数が1万5600人以上にのぼり、537人が死亡している。心配なのは、ブルンジ、ケニア、ルワンダ、ウガンダなど、これまでエムポックスが確認されたことのない近隣諸国にも広がっていることだ。この状況を重く見たWHOは「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言した。

 緊急委員会のディミー・オゴイナ委員長は声明で、「アフリカの一部地域でのエムポックスの急増と、性感染しうるエムポックスウイルスの新しい株の広まりは、アフリカのみならず地球全体にとって緊急事態だ」と述べた。

「アフリカで発生したエムポックスはアフリカで放置され、後に2022年の世界的な流行を引き起こした。歴史が繰り返されることがないよう、今こそ断固として行動しなければならない」

 エムポックスはどんな病気なのだろうか? 専門家が今回の大流行を心配しているのはなぜなのだろう? 私たちが知っておくべき点をまとめた。

 エムポックスは最近まで「サル痘」と呼ばれていた。この病気を引き起こすエムポックスウイルスは天然痘と同じオルソポックスウイルス属のDNAウイルスだが、エムポックスは天然痘よりはるかに重症度が低く、感染力も弱い。

 WHOによれば、エムポックスの症状の特徴は、発疹(水疱や膿疱となって痛みやかゆみを伴う)、リンパ節の腫れ、発熱だ。

 エムポックスウイルスには「クレードI」と「クレードII」の2系統がある。現在の大流行を引き起こしているのはクレードIで、患者の10人に1人が死亡する。クレードIIは2022年に流行したもので、現在流行しているものに比べて致死率ははるかに低く、1%未満だ。

 今回の大流行では、「クレードIb」という新しいサブクレードが出現したことが緊急事態宣言の動機となった。また、コンゴ民主共和国での感染者と死亡者の多くが15歳未満であることから、特に子どもが影響を受けやすいと考えられている。

 エムポックスは人獣共通感染症であり、動物からヒトに感染する。1958年にデンマークの研究所にいたサルで初めて確認されたためサル痘と名づけられたが、実際の自然宿主はわかっておらず、アフリカの熱帯雨林に生息する小型哺乳類ではないかと考えられている。エムポックスウイルスは多くの哺乳類に感染することができるが、野生動物から分離されたのは2回だけだ。

 ヒトへの感染が初めて確認されたのは1970年で、コンゴ民主共和国の男児が感染した。以来、ほとんどの感染はアフリカの西部と中央部で起きている。