アルコールが「飲まない人」に及ぼす害、飲酒する人より大きな可能性

AI要約

ニュージーランドの研究によると、実際にアルコールを飲んだ人よりも、飲んでいない人に対するアルコールの害が大きい可能性があることが示された。

アルコールによって失われた健康寿命の年数やその影響が詳細に記されており、アルコールが直接または間接的に多くの健康問題を引き起こすことが明らかになっている。

飲酒者だけでなく、飲酒していない人にもアルコールによる健康被害が及ぼされることが強調され、アルコールの摂取にはリスクが伴うことが強調されている。

アルコールが「飲まない人」に及ぼす害、飲酒する人より大きな可能性

アルコールは、実際に飲酒する人よりも、飲んでいない人に大きな害を与える可能性があることが、学術誌『Addiction』に掲載されたニュージーランドの研究で示された。

研究チームは、ニュージーランドの入院記録と調査データからアルコール関連の障害や早死によって失われた健康寿命の年数を推定した。研究によると、ニュージーランドでは2018年に、アルコールが原因で7万8277年もの健康寿命が失われた。このうち90%以上が胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)によるもので、6.3%が交通事故、3.4%が暴力によるものだった。

注目すべきは、実際にアルコールを飲んだ人よりも、飲んでいない人の健康寿命が1万8000年多く失われた点だ。アルコールに関する研究の大半は主に飲酒した人への悪影響についてだが、前述の研究は、飲酒しない人であっても飲酒者から直接または間接的にアルコールの有害な影響を受けることを浮き彫りにしている。

アルコール摂取で健康を害することはよく知られており、これだけなら安全という量はない。米公衆衛生協会は、アルコールには健康上の利点はないと指摘している。米疾病予防管理センター(CDC)によると、飲酒は高血圧、心臓病、肝臓病、免疫力の低下、うつ病や不安症などの精神疾患につながる可能性がある。また乳房や口腔、結腸、肝臓、直腸などさまざまな部位のがんとも関連している。

アルコールが飲酒者に及ぼす影響よりも、飲酒していない人に及ぼす影響の方が深刻な場合もある。前述の研究では、健康寿命の大半がFASDによって失われている。同障害は母体にいる赤ちゃんが母親の飲酒でアルコールにさらされて起こるものだ。

FASDの症状は、その子どもは出生時の頭は小さく、身長が平均より低く、体重も少ない。また、記憶力や協調性に乏しく、注意力に欠け、言語能力の発達に遅れがみられることがある。加えて視力や聴力、心臓や腎臓にも問題を抱えることがある。現在のところ治療法はないため、FASDを持って生まれた人は生涯この病気と付き合っていくことになる。米小児科学会は、米国では毎年4万人がFASDを持って生まれてくると推定しており、これらはすべて禁酒によって完全に防ぐことができたはずだ。

アルコールを原因とする交通事故もまた、生命を大きく脅かしている。米運輸省の道路交通安全局(NHTSA)によると、米国では毎日37人が飲酒運転による事故で死亡している。

アルコールが飲酒しない人にもたらす破壊的な影響には暴力もある。性的暴行や親密なパートナーからの暴力、殺人、自殺などだ。アメリカン・アディクション・センターによると、米国では毎年推定8万8000人が飲酒関連の暴力で命を落としている。

アルコールは文字どおり社会に壊滅的な影響を与えており、米国では依然として予防可能な死因の最たるものだ。当人だけでなく、周囲の人にとっても、有益なアルコール摂取量というものはない。アルコールが個人と社会の両方に及ぼす公衆衛生上の影響を考えると、世界中で毎年300万人の命を奪っているアルコールとの関係を見直す時期に来ているのかもしれない。