がん免疫療法、柱の一つに ~国内承認から10年~

AI要約

日本でがん免疫治療薬が承認されて10年が経過したが、治療効果の向上や副作用への対応が課題となる。

免疫療法は治療の選択肢を増やし、希望を持てるようにすると評価されるも、認知度はまだ不十分。

オプジーボなどの免疫薬は新しいタイプの治療薬として位置付けられ、さらなる発展や普及が期待される。

がん免疫療法、柱の一つに ~国内承認から10年~

 世界に先駆けて日本でがん免疫治療薬が承認されてから10年が経過した。免疫療法は手術、放射線、薬物療法(化学療法)と並ぶ4本目の柱と位置付けられ、医師や患者からは「治療の選択肢が増えた」「進行がんの患者でも希望が持てるようになった」などと評価する声が上がる。一方で、幅広く認知されているとは言えず、治療効果の向上や副作用への適切な対応などの課題も残る。

 「臨床試験を始めた時はなかなか信用してもらえなかった」。2014年7月に承認された薬「オプジーボ」を発売した小野薬品工業の相良暁会長CEOは感慨深げに語る。同社によると、国内の利用者は推定で19万人に上る。開発に貢献したとして、本庶佑・京都大学特別教授らが18年のノーベル生理学・医学賞を受賞した。

 オプジーボは免疫チェックポイント阻害薬と言われ、免疫細胞からの攻撃にブレーキをかけようとするがん細胞の働きを阻止し、がんを死滅させる。従来の抗がん剤はDNAの複製を防いでがん細胞を増殖させない仕組みで、両者は作用の仕方に違いがある。国内で承認された免疫薬は現在までに八つに増え、治療対象のがんは20種となっている。

 この新たなタイプの治療薬はどう評価されているのか。小野薬品などが今年6月下旬に実施したオンライン調査(対象は医師100人、がん患者900人)では、医師の90%が「がん治療の選択肢として地位を築いた」、使用経験のある患者の68%が「治療法の選択肢が増えてうれしい」と肯定的に受け止めていた。今後についても、さらなる発展や普及への期待が大きい。

 他方、免疫薬を使ったことがない患者ではやや様相が異なる。がん免疫療法を認知している割合は63%あるものの、大半は「知っているというほどではないが、名前を聞いたことがある」という程度。副作用に関しても認識が不十分だ。同社の高井信治執行役員は「一般の患者にはまだ深く認知されていない。正しい理解促進のために、情報発信に積極的に取り組んでいきたい」と総括する。