アマゾンの不思議な家族関係 虐待も不倫もないわけは?

AI要約

南研子さんはアマゾンの熱帯森林保護支援活動に30年以上関わり、熱帯森林保護団体(RFJ)代表として活動している。昨年はアマゾンから帰国し、子ども向けの著書を出版した。

アマゾンの家族関係には、他の文化とは異なる特徴があり、子どもへの接し方や関わり方が独特である。日本とは異なり、社会問題の一つである子どもの自殺はアマゾンでは起こりにくい状況にある。

アマゾンの村では子どもが生まれると村人全員が関わり、親に限らず誰でも子どもに接する。家族や居場所が柔軟であり、子どもの選択肢が豊富な環境が整えられている。

アマゾンの不思議な家族関係 虐待も不倫もないわけは?

 アマゾンの熱帯森林保護支援活動に30年以上関わり、2000日以上を先住民と共に過ごした熱帯森林保護団体(RFJ)代表の南研子さん。昨年は新型コロナ禍後に初めてアマゾンから帰国し、子ども向けの著書「アマゾンの不思議な森へようこそ」を出版しました。アマゾンの不思議な家族関係について南さんに話を伺います。

                           (聞き手・文 海原純子)

 海原 著書を読ませていただきました。私たちの多くは全く想像もつかないような緊張感のある、でもわくわくするようなアマゾンの暮らしがつづられています。見たこともない動物、毒蛇や毒グモ、巨大なピラニア、サソリ、呪術師、森の精霊の話など、お金も文字もない世界が生き生きと語られていて、子どもだけでなく大人も一気に読んでしまう本だと思いました。今年の夏休みの推薦図書になったんですよね。

 南 日本では小中高生の自殺が513人(2013年)に上っています。アマゾンでは、自殺などないし、うつも認知症も寝たきりもない。子どもの自殺なんて考えられません。

 海原 子どもの自殺は4、7、10月が多いのです。背景にあるのは学業の不安、虐待やいじめなどとされています。夏休みの後に不登校になるなど問題が多いです。アマゾンでは子どものいじめや親からの虐待はないということですが。

 南 私は30年以上アマゾンと関わっていますが、いまだにここの家族関係は分からないんですよ(笑)。というのは、ここの家の子どもだと思っていたら1カ月後になると、別の家でご飯を食べて一緒に暮らしている。「え~、どうなってるんだろう」と。要はどこの家にいてもいいんです。「どこの子」という囲い込みはなく、「みんなの子ども」という意識です。子どもが生まれると3カ月は母親が抱きかかえて育児します。でも、それを過ぎると、村人全員が自分の子どものように赤ちゃんに接し、あやしたりします。だから小さい頃から村人全員と関わりがあるんです。

 海原 それはすごいですね。

 南 親にしても自分の子だからすべて気が合うわけじゃないですよね。中には相性が悪い親と子もあるわけです。親が虐待したくなる場合もあるかもしれない。だから、子どもが「この家は居心地が悪い」と思ったら、別の家で暮らしても問題はないんです。みんなの子どもだから。

 海原 それは選択肢があり、居場所ができて子どもにも親にもいいですね。「子どもは社会の子」という意識は日本では建前では語られますが、自分のことになるとだめなことが多い。最近は同級生の家を放課後に訪ねたり、友達の家でおやつをごちそうになったりするのも禁止という風潮があります。ところで、夫婦間のけんかは起きないんですか。