水素、ヘリウム、二酸化炭素、酸素…地球の大気は何度も変化 全球凍結の時代も

AI要約

地球の大気は、誕生時には水素やヘリウムが主体だったが、ジャイアントインパクト説により現在の大気が形成された。

初期の地球大気には、水素、水蒸気、CO2などが含まれており、CO2濃度は金星に匹敵するほど高かった。

窒素は誕生時からほぼ一定量で推移しており、地球上のほとんどが海に沈殿している。

水素、ヘリウム、二酸化炭素、酸素…地球の大気は何度も変化 全球凍結の時代も

窒素が約80%で、酸素が約20%。私たちがふだん意識もせずに呼吸している大気ですが、地球の誕生時は全く違ったようです。地球、そして生物とともに大気が歩んだ46億年の歴史は、さまざまなことを教えてくれると東京大教授(地球惑星システム科学)の田近英一さんは言います。長い道のりですが、駆け足で案内してもらいました。(聞き手・大牟田透)

東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻教授

1963年生まれ。地球の表層環境(気候、大気・海水組成、生命圏)がどのように成立し、地球史を通じてどのように進化してきたのかを研究するとともに、太陽系内外における地球型惑星の表層環境の成立、変動、進化の理解を目指している。「46億年の地球史: 生命の進化、そして未来の地球」(三笠書房)など著書多数。

ーー今、大気というと、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスによる地球温暖化に注目が集まっていますが、地球史的にみるともっとダイナミックに変わってきたそうですね。

太陽系は、宇宙で最も多い水素とヘリウム主体のガスが集まって太陽ができ、惑星も太陽を囲む円盤状のガスの中で誕生しました。ですから形成途上の地球も一番最初の大気は水素とヘリウムだったはずです。木星や土星の大気は今もそうです。

現在の大気ができるには、この最初の大気、一次大気が地球からなくなる必要がありました。いつ、どうやってなくなったかが大きな謎ですが、地球ができる最後の過程で、火星サイズの原始惑星が衝突し、破片で月ができると同時に大気が吹き飛んだというジャイアントインパクト説が有力です。衝突で地面はどろどろに溶けたマグマの海(マグマオーシャン)に覆われ、そこから抜け出たガスが今に至る大気の始まりになった可能性が高いと考えられています。

ーーどんなガスが出てきたのでしょう?

まず水素と水蒸気、一酸化炭素、それと今は大気中に400ppm(0.04%)しかないCO2だったようです。このうち水素は宇宙空間に散逸し、一酸化炭素はCO2に変化したと考えられます。金星や火星は今もCO2主体です。金星の現在の大気は90気圧のCO2でできていますが、地球上の堆積岩を調べると地球でもほぼ同じぐらいのCO2があったらしい。

金星と同じような90気圧近いCO2の大気を地球も持っていたが、地球では大部分が海に沈殿して今は堆積岩に含まれていると考えられています。

誕生間もない太陽は今の7割ぐらいの明るさしかありませんでした。CO2が今の量だったら地球は凍りつくので、その点からもCO2はずっと多かったはずです。

あと、今と同じぐらいの量の窒素も出たけれど、その後、CO2や酸素ほど大きな増減はしてこなかったと考えられています。