じつは、「地動説」は新しいアイデアではなかった…それでもコペルニクスが「歴史上もっとも有名な科学者」にとどまり続ける「意外な理由」

AI要約

古代ギリシャの原子論からアインシュタインの相対性理論まで、科学の歴史を振り返りながら偉大な発見の物語を語る新刊『父が子に語る科学の話』から、コペルニクスの地動説に焦点を当てた内容を紹介。

コペルニクスの地動説がどのように生まれ、彼の信念や宗教的観点が理論の基礎となったことについて解説。彼の独立心に焦点を当てながら、思想の変遷をたどる。

ルネサンス的人間として自ら考える姿勢を持ったコペルニクスの重要性を強調し、古代ギリシャの知識の再生や進歩のカギとなる独自の立場に焦点を当てる。

じつは、「地動説」は新しいアイデアではなかった…それでもコペルニクスが「歴史上もっとも有名な科学者」にとどまり続ける「意外な理由」

古代ギリシャの原子論から、コペルニクスの地動説、ガリレオの望遠鏡、ニュートン力学、ファラデーの力線、アインシュタインの相対性理論まで、この世界のしくみを解き明かす大発見はどのように生まれてきたのか?

親子の対話形式でわかりやすく科学の歴史を描き出した新刊『父が子に語る科学の話』から、偉大な科学者たちの驚くべき発見物語の一端をご紹介しよう。

*本記事は、ヨセフ・アガシ著/立花希一訳『父が子に語る科学の話 親子の対話から生まれた感動の科学入門』(ブルーバックス)をオンライン向けに再編集したものです。

コペルニクスは、古代ギリシャにおける意見の相違を指摘した人物だった。かれは、宇宙の中心について他のすべてのギリシャ人に同意しなかったアリスタルコスを発見した。

おそらくギリシャ人がみんな同じくらいに素晴らしかったわけではない。ある人々は他の人々より優れていたにちがいない。そこで西欧の人々は、ギリシャの何を研究し、何を見習うかを決めるために、自分自身で考えるようになっていった。

コペルニクスはどうしてアリスタルコスが正しいと信じたのか。この問いにはふたつの答えがある。ひとつは科学史において重要なもの、もうひとつは宗教史において重要なものだ。コペルニクス自身はとても宗教的な人だったので、われわれがおこなう宗教と科学の区別を理解しようとはしなかっただろうが。

科学的な答えは、地球が宇宙の中心にあると信じている人々のとなえる理論が、単純でも簡潔でもなく、複雑きわまりないものだったということなのだが、これについては別の機会に説明しよう。

コペルニクスにとって、より重要だった宗教的な答えは、太陽を宇宙の中心に据えることによってよりよい理論を生み出すことができるとかれが信じたことだ。

太陽は神の象徴なので、太陽こそが宇宙の中心にあるべきだからと。コペルニクスは、太陽は神の目か、あるいは神の王座のようなものだと信じ、したがって、太陽こそが、宮廷において王座がその中央にあるように、宇宙の中心になければならないと信じたのだ。以上のすべてのことが、コペルニクスすら夢にも思わなかった結果へとどのようにして発展していったのかは、後々見ていくことにしよう。

ところで、ここまでで興味深いのは、コペルニクスがアリスタルコスを信じたのは、ギリシャ人が優秀な人々だと信じたからだけではなく、自分自身の独自の宗教的見解をもっていたからでもあったことだ。別の言い方をすると、コペルニクスは、神に関する理論においても、また星々に関する理論においても、かなり独立心の旺盛な人物だった。

コペルニクスは偉大なルネサンス的人間のひとりだった。ルネサンス的人間は、古代ギリシャの生活の再生、すなわち各人が自分の頭で考えるという生活の再生に努めたが、これこそが進歩のカギだったんだ。

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さらに「父が子に語る科学の話」シリーズの連載記事では、偉大な科学者たちの驚くべき発見物語を紹介していく。