「空飛ぶクルマ」は九州から離陸する?JR九州の「事業性の調査」が業界の未来を左右する理由

AI要約

ベンチャー企業のスカイドライブとJR九州が空飛ぶクルマの開発を手がけるために業務提携し、具体的なシナリオづくりやユースケースの検討を進めることが注目されている。

両社が実用化に向けて具体的な事業可能性の検討を行い、空飛ぶクルマの運航ルート開設を目指す際に重要な要素となる。

JR九州が今年度中に空飛ぶクルマへの投資判断を行うことで、市場全体の未来に大きな影響を及ぼす可能性がある。

 「空飛ぶクルマ」の開発を手がけるベンチャー企業のスカイドライブとJR九州が業務提携した。事業化に向けて、両社で展開地域やビジネスモデルなどを検討する。

 空飛ぶクルマはこれまで、事業化に向けた具体的なシナリオづくり、いわゆる「ユースケース」の検討の甘さから実用化に至らないケースが多かった。

 JR九州は実用化に向けてどのようなユースケースを見出すのだろうか。その決断は空飛ぶクルマの未来を大きく左右する可能性がある。

 (桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

 ベンチャー企業のスカイドライブとJR九州が都内で7月4日、「空飛ぶクルマ」の運航を目指した連携協定締結を発表した。

 「空飛ぶクルマ」に明確な定義はないが、小型飛行機、グライダー、ヘリコプターなどと並ぶ比較的小型の飛行体の一種だ。

 近年は主に、電動システムを用いて垂直に離着陸が可能な「eVTOL」(イー・ブイトール:エレクトロニック・バーティカル・テイクオフ&ランディング・エアクラフト)を指す場合が多い。

 発表資料には「両社で空飛ぶクルマの実用化による誘客促進、地域活性化等を推進するため、事業スキームや導入エリアなどについて、さらに具体的かつ詳細な事業可能性の検討を行い、JR九州の持つ鉄道駅や商業施設等を活用した空飛ぶクルマ運航ルート開設の実現を目指す」とある。

 要は、ユースケース(実用化に向けた具体的なシナリオ)を徹底的に洗い出すということだ。

 しかも、JR九州の古宮洋二社長は「今年度は、どのような事業計画を立てるか(考えることに)専念するための期間。事業として成り立つようであれば当然、資金も必要になる」と話す。

 これは、JR九州としてドローン事業にすでに投資をしているとの発言に対して、記者からスカイドライブとの関係が今後、資本関係に発展する可能性はあるかと問われた際の回答だ。

 見方を変えれば、今年度中に空飛ぶクルマへの投資判断をするということだろう。

 JR九州が空飛ぶクルマに投資することになれば、スカイドライブに限らず空飛ぶクルマ関連市場全体にとって大きなプラス要因になる。一方、投資を見送れば同市場全体に対するマイナスの影響は計り知れない。

 今年度はまさに、空飛ぶクルマ市場の未来に向けたターニングポイントになると言えるだろう。