【土砂災害を知る】地すべり・土石流・がけ崩れの違いは?日本最大級「亀の瀬地すべり」もし滑ったら奈良盆地が沈む?命を守る手立ては?専門家に聞いた

AI要約

未災とは、災害がまだ起きていない状態や未来に起きる可能性がある状況を指す言葉。京都大学の斜面未災学研究センターがその研究を行っている。

土砂災害の発生メカニズムとして、地震、風化、水圧などが挙げられ、近年の激しい雨の増加が土砂災害に与える影響も懸念されている。

地すべり地域の事例を挙げつつ、かつては日本人が地すべり跡地に住むことが多かった歴史的背景や、地すべり地域に見られる千枚田といった文化遺産についても触れられている。

【土砂災害を知る】地すべり・土石流・がけ崩れの違いは?日本最大級「亀の瀬地すべり」もし滑ったら奈良盆地が沈む?命を守る手立ては?専門家に聞いた

『未災(みさい)』という言葉を知っていますか?

未災とは、「いまだに災害が来ていない」とか「未来に災害が来るかもしれない」という意味。京都大学には「斜面未災学研究センター」もできています。大雨で相次ぐ土砂災害に詳しい京都大学の釜井俊孝名誉教授に、その種類や発生のメカニズム、我々が命を守る手立てなどを聞きました。

釜井名誉教授によりますと、①地震~大きな力で崩れる ②風化~長年経って土中に隙間が空くことで崩れる ③水圧~土壌の隙間に雨水が入り、その量が増えると水圧が上がり岩と岩を引き離そうとして崩れる のが主なメカニズムです。

雨に関しては、統計期間の最初の10年間と、最近10年間を比較すると、明らかに違いが出ています。非常に激しい雨(1時間50ミリ以上)は1.5倍。猛烈な雨(1時間80ミリ以上)は1.7倍。記録的短時間大雨情報(1時間100ミリ以上)は1.8倍と増えています。こうした雨の増加が、土中の水圧にも関わり、土砂災害が増えているとみられます。

まずは『地すべり』。深く大きく滑るもの、地下に弱い層があって、過去に複数回滑ったことがある場所のことです。日本最大級のものは、大阪と奈良の間にある「亀の瀬地すべり」と呼ばれるもの。

1900年代以降、3回くらい地すべりが起きていて、もし大きいものが起きてしまうと大和川を止めてしまい、川の水が大阪湾に流れなくて、奈良盆地が浸水してしまう、そんなこともありえるとされています。

この場所について、国は、地すべりしないよう金をかけて対策しています。地中に直径3.5mの杭を何本も打ち込んで山の動きを止めようとしたり、排水トンネルを6つ造ったりしています。

地すべり地域を歴史的に見ると、「かつて(江戸時代くらいまで)、日本人は地すべりの跡地に好んで住んでいた」というのです。そのわけは当時は、平野部の洪水リスクの方が大きかったから、ということです。とはいえ山に住むのは傾斜がきつく、そこまで傾斜がなく、耕しやすい「地すべりの跡地」を選んでいたというのです。

全国各地で「千枚田」が見られますが、これは、地すべりと人が共存してきた証、文化遺産なんだと、釜井名誉教授は話しています。