実は、多くの天文学者が当初認めなかった「ビッグバン理論」。その痕跡「宇宙マイクロ波背景放射」は偶然発見されたものだった!

AI要約

宇宙誕生に迫る最新の宇宙論を紹介する話題の書籍『宇宙はいかに始まったのか ナノヘルツ重力波と宇宙誕生の物理学』が時空の歪みとして捉えられた謎の重力波の存在を取り上げている。

ビッグバン理論の歴史とジョージ・ガモフによる理論予測に焦点を当て、当初この理論が認められなかった背景を明らかにする。

記事では黒体放射の概念や温度の定義についても解説し、ビッグバン理論がなぜ揶揄されるようになったかを紹介している。

実は、多くの天文学者が当初認めなかった「ビッグバン理論」。その痕跡「宇宙マイクロ波背景放射」は偶然発見されたものだった!

時空の歪みとして捉えられた謎の重力波の存在。世界に衝撃を与えたこの観測事実から宇宙誕生に迫る最新の宇宙論を紹介する話題の書籍『宇宙はいかに始まったのか ナノヘルツ重力波と宇宙誕生の物理学』。

いよいよ話題は「宇宙のはじまりの姿」に迫っていきます!皆さんも「ビッグバン理論」という言葉を聞いたことがあると思います。しかし、当初、多くの天文学者はこの理論を認めませんでした。しかも、その理論の正しさの根拠は偶然に発見されたものだったのです。

*本記事は、『宇宙はいかに始まったのか』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。

1948年、理論物理学者のジョージ・ガモフは「かつての宇宙が高温・高密度だった痕跡として、宇宙全体が電磁波放射で満たされてるはずだ」という理論予測を発表しました。そして、「その電磁波放射は絶対温度で5ケルビン(K)の黒体放射である」と予言しました。

ここで見慣れない言葉が出てきたので解説します。

まず、「黒体放射」とは、理想的な物質から熱的に放射される電磁波という意味です。たとえば、溶鉱炉でどろどろに溶けた鉄は高温で赤く光っています。これは、物質組成に応じて、特定の波長の電磁波を選択的に放射しているからです。そのような選択的な電磁波放射がないような物体を理想的な物体とよび、そこからの放射を「黒体放射」といいます。

次に、温度表記について説明しておきます。日本での日常生活で用いられる温度の名称は、セルシウス温度です。いわゆる摂氏です。毎年、夏になると「猛暑日」という言葉がニュース記事に登場します。この猛暑日は、その日の最高気温が摂氏35度以上の場合をさします。1気圧下で水の凝固点を摂氏0度と定義し、水の沸点を摂氏100度と定義するものです。

この定義から明らかなように、セルシウス温度は我々が日常生活で用いる場合に便利です。

一方、温度の物理的な意味は、構成する物質内部における分子の熱的な運動の強さです。温度が高いほど、分子の熱的な運動が激しくなり、温度が下がれば、その運動がおとなしくなるのです。

このことを考慮して、熱力学を用いて温度を定義したものが、「熱力学温度」です。これは、しばしば「絶対温度」とよばれることがあります。

しかし、アインシュタインもかつてそうであったように、天文学者の多くには不変な宇宙像の呪縛があったため、このガモフの理論はなかなか受け入れられず、それを揶揄(やゆ)して、英語で「大きなバン(という音)」の意味を込めて、「ビッグバン理論」(Big Bang Theory)とよんだのです。