チョウが大西洋を横断、おそらく初確認、欧州からアフリカを経て南米まで7000kmの超長旅か

AI要約

ヨーロッパで生まれたチョウが、西アフリカを経て南米まで7000キロを旅した可能性を示す研究結果が発表された。昆虫の渡りとしては最長クラスの記録となる。

南米フランス領ギアナの海岸で見つかったチョウの仲間、ヒメアカタテハの謎を解明するための研究が行われた。

ヒメアカタテハはヨーロッパで孵化した後、西アフリカを経て南米に渡ったと考えられ、7000キロに及ぶ長距離移動を1カ月で達成した。

チョウが大西洋を横断、おそらく初確認、欧州からアフリカを経て南米まで7000kmの超長旅か

 ヨーロッパで生まれたチョウが、西アフリカを経て南米まで7000キロを旅した可能性を示す研究結果が発表された。昆虫の渡りとしては最長クラスの記録となる。研究は6月25日付けで学術誌「Nature Communications」に発表された。

 10年ほど前のある秋、論文の筆頭著者でナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(探求者)のへラルド・タラベラ氏は、南米フランス領ギアナの海岸で「いるはずがない」ものを探していた。ヒメアカタテハ(Vanessa cardui)と呼ばれるチョウの仲間だ。

 トラのような体色のヒメアカタテハは、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、北米、オーストラリアでよく見られる。南米には生息していないのだが、時折そこでヒメアカタテハを見たという目撃情報が寄せられていた。

「調査の最終日でした。突然、日光のなかで何かがひらひらと飛んでいるのを見たんです」と、タラベラ氏は言う。

「信じられませんでしたが、確かにそれはヒメアカタテハでした」

 しかも、1匹だけではなかった。虫取り網を取り出したタラベラ氏は、ぼろぼろになった羽で舞い飛ぶヒメアカタテハをさらに9匹数えた。体長わずか5センチほどの小さなチョウが、どのようにして生まれ故郷から数千キロも離れたこの海岸にやってきたのだろうか。

 それから10年後、スペインにあるバルセロナ植物学研究所の昆虫学・進化生物学者であるタラベラ氏とその研究チームは謎を解明したようだ。

 チームは、風のパターンや花粉のサンプル、ゲノム解析といったこれまでにない新しい方法を用いて分析した結果、ヒメアカタテハが、西ヨーロッパで孵化したのち西アフリカへ飛び、そこから南米に渡ったと考えている。つまり、チョウは計7000キロ近くを1カ月もかけずに移動したことになる。昆虫が休みなしに移動した距離としては、最長記録の一つに数えられる。

 また、昆虫の大西洋横断が確認されたのも、おそらくこれが初めてだと、タラベラ氏は言う。

 すると、人間が知らない間に同じように長距離を移動する昆虫はどれくらいいるのか、という疑問が湧いてくる。

「長距離の渡りについて、私たちは何が起きているのかを見過ごしているのかもしれません」と、タラベラ氏は言う。