ひとりで悩まず受診を~骨盤臓器脱~

AI要約

骨盤臓器脱とは、骨盤の底を支える筋が緩むことで子宮やぼうこう、直腸が腟から下がってくる病気の総称であり、治療法が進歩している。

原因は経腟分娩や難産、肥満、更年期以降の女性ホルモンの低下などがあり、多くの女性が悩んでおり、リスク要因が重なると悩まされる可能性がある。

米国の統計によると、出産経験者の半数以上が骨盤臓器脱に悩まされており、年齢やリスク要因に関わらず、多くの女性が影響を受ける可能性がある。

ひとりで悩まず受診を~骨盤臓器脱~

 子宮やぼうこう、直腸など骨盤の中にある臓器が下がってきて腟から体の外に脱出してしまう骨盤臓器脱。尿がもれる、あるいは出にくい、便が出にくい、腟の入り口に何かが挟まったような違和感がある、など日常生活にさまざまな支障を来す。新しい手術法を日本に導入し、ペッサリーの開発も手掛けるなど、骨盤臓器脱の治療法の進歩を推進してきた明理会東京大和病院の明樂重夫院長は「骨盤臓器脱の治療法は、この20年で大きく進歩しています。長くなった人生をより豊かに過ごすため、我慢せずに自分に合った方法を見つけましょう」とアドバイスする。

 ―「骨盤臓器脱」とは、どんな病気ですか。

 骨盤の底をハンモックのように支えている骨盤底筋が緩んでしまい、腟からぼうこうや子宮、直腸が下がって出てきてしまう病気の総称です。腟から臓器が出てきてしまうと聞くと、びっくりするかもしれませんが、骨盤底筋が緩むと、骨盤内にある臓器を支えきれなくなって、腟が裏返ってその中に落ちてきます。下がってくる臓器によって、子宮脱、子宮摘出後の腟断端脱、ぼうこう瘤、直腸瘤(りゅう)があります。

 重症度(POP-Q)はステージⅠからⅣまであり、ステージⅠではまだ臓器が腟の中に収まっている状態ですが、進行するにつれて腟から外に出ていくようになり、ステージⅣにもなると、完全に臓器が外に脱出した状態になります。

 ―どんな原因で起こりますか。

 骨盤内の臓器を支える骨盤底筋が緩む原因は、経腟分娩、難産、巨大児(4000g以上)の出産による骨盤底筋やじん帯の損傷をはじめ、肥満のため骨盤内の臓器が支えきれない、更年期以降、女性ホルモンが低下して骨盤底筋の伸縮性が損なわれる、加齢に伴い筋肉が弱まる、などです。慢性的な便秘で排便のときに、強く息むことも骨盤底筋への負担になります。また、せきや、重い荷物を日常的に持つ仕事なども、常に腹圧がかかって骨盤内の臓器が押し下げられるため、骨盤底筋が緩む原因になります。

 ―悩んでいる女性はどれくらいいますか。

 米国の統計*によると、出産を経験した女性の2人に1人が骨盤臓器脱に悩まされています。年齢層は50歳以上が大多数ですが、20代の患者もいます。出産を経験していなくても、肥満、慢性的な便秘やせき、重い荷物を持つ、などのリスク要因が重なれば、骨盤臓器脱を起こす可能性があるので、さらに多くの女性が悩まされていることが予測されます。(*出典 Olsen AL et.al. Obstet Gynecol 1997;89:501-506)