乳がんのマンモグラフィー、超音波検査の追加は「根拠不十分」と米専門委員会、反発も

AI要約

高濃度乳房は、マンモグラフィーで乳がんを見つけにくいため、追加検査が行われることがある。

USPSTFは、追加検査の有益性について十分なエビデンスがないとしている。

米国の医師たちは、高濃度乳房の女性には追加検査を行っているが、その効果については意見が分かれている。

乳がんのマンモグラフィー、超音波検査の追加は「根拠不十分」と米専門委員会、反発も

 乳房中の乳腺の密度が高い「高濃度乳房(デンスブレスト)」は、乳がん検診のマンモグラフィー(乳房X線検査)で乳がんを見つけにくい。そこで、マンモグラフィーで高濃度乳房と判定された女性に対して、乳房超音波検査やMRI検査が追加で行われることがある。米疾病対策センター(CDC)によれば40歳以上の米国人女性の約半数、日本乳癌学会によれば同日本人女性の約4割が高濃度乳房だと推定される。

 しかし、公衆衛生に関する勧告を行う米予防医学専門委員会(USPSTF)は、2024年4月の勧告で、そうした追加検査が有益かどうかを判断するには現時点ではエビデンス(根拠)が不十分だとした。追加検査が女性たちの命を救うことを示す、複数年にわたる無作為化(ランダム化)比較による臨床試験の数が少なすぎるというのが理由だ。

「MRIまたは超音波による検査を補助的に実施することで進行がんを減らせるかどうかを明確に示す研究が見つからなかったのです」と、米タフツ大学医学部教授でUSPSTF副委員長であるジョン・ウォン氏は説明する。なお、USPSTFは今回の勧告で、ほとんどの女性が2年に1回のマンモグラフィー検査を受け始めるべき年齢を50歳から40歳に引き下げている(編注:日本の厚生労働省が定める市町村のがん検診の項目では40歳以上を対象に2年に1回となっている)。

 乳房の大きさや形を作っているのは脂肪だが、高濃度乳房には、線維や乳腺の組織が多い。高濃度乳房は最大6倍の乳がん発症リスクと関連しているため、補助的な検査の問題は重要だ。

 高濃度乳房には「障害物が多いのです」と、米国の乳がん財団スーザン・G・コーメンの教育ディレクターであるケルシー・ハンプトン氏は説明する。「ガラス瓶を透かして見るとき、透明な水を入れた場合と、水と大量の氷を入れた場合をそれぞれ考えてみてください。向こうのものは見えますが、同じ細かさで見ることはできないでしょう」

 ただし、高濃度乳房の女性にとってもマンモグラフィーは重要な検査だと氏は付け加える。

 多くの婦人科医は、高濃度乳房と判定された女性には、マンモグラフィーとともに超音波またはMRIによる検査を日常的に追加している。これらの追加検査について専門委員会が「根拠が不十分」と評価していても、これらの検査で恩恵を受ける女性がいないという意味ではない。

 今回の勧告についてUSPSTFは、「われわれは、追加検査が高濃度乳房の女性のがんの早期発見に役立つかどうか、そしてどのように役立つかについて、さらなる研究を緊急に求めています」と記している。

 今回の評価は、今後も追加の検査を行うべきかどうか、保険会社がこれらの検査を支払い対象から除外しないかなどの点で、現場の医師たちを混乱させるだろうと指摘するのは、USPSTFの姿勢に反対している米ピッツバーグ大学放射線科の卓越教授ウェンディー・バーグ氏だ。バーグ氏自身は、現在のエビデンスはこれらの検査を推奨するのに十分だと考えているため、専門委員会の評価に「あぜんとした」と語っている。

 さらなる混乱を招きそうなのが、米食品医薬品局(FDA)が2024年9月から、マンモグラフィーを受けたすべての女性に対し、乳腺濃度が4段階のどれに当てはまるかを伝え、「高濃度乳房の女性には、マンモグラフィーに加えて他の画像検査ががんの発見に役立つ場合がある」と助言するよう義務づけようとしていることだ。