メス不要、乳房の形状を保つ…乳がんの「ラジオ波焼灼療法」とは

AI要約

乳がん治療の新たな方法として、ラジオ波焼灼療法が公的医療保険に認められ、乳がん学会が施設の整備を進めている。

治療は早期発見できればメスを使わず乳房の形状を保つことができ、患者の負担を軽減できる。

大阪公立大病院では治療を開始し、患者が退院後も体への負担が少なく、日常生活に戻れるという評判がある。

 腫瘍に針を通して医療用の電磁波を当て、熱でがんを焼き切る「ラジオ波 焼灼(しょうしゃく)療法」が昨年12月、乳がんにも公的医療保険が認められ、日本乳癌(がん)学会が実施施設の整備を進めている。早期発見できればメスを使わず乳房の形状を保つこの治療を選択でき、患者の負担軽減につながると期待されている。

 治療は全身麻酔で行われ▽がんの直径が1・5センチ以下▽わきのリンパ節などへの転移がない▽薬物療法や放射線治療などを行っていない▽20歳以上の女性――などの実施条件がある。妊婦や心臓ペースメーカー装着者は対象外となる。

 4月4日、大阪公立大病院(大阪市阿倍野区)で関西1例目の治療が行われた。患者の50歳代女性は腫瘍が右乳房の乳頭近くにあり、通常の手術では乳房を大きく切除する必要がある一方、がんの直径が1・3センチなど焼灼療法の条件に適合し、病院が実施を提案した。

 治療では電極の付いた特殊な細い針をがんに貫き通し、徐々に電流の出力を高めて患部を焼いていく。きちんと焼き切ったかどうかを超音波検査の画像や患部の温度、通電時の音で確認しながら手技を進め、15分ほどで終了。その後、乳房を保冷剤などで冷却した。

 焼灼療法は通常、数日間の入院で実施でき、その後に抗がん剤やホルモン剤などの薬物療法や放射線治療に移行する。女性も焼灼療法の2日後に退院。「体への負担が小さく、すぐ日常生活に戻れた」と話す。

 国立がん研究センターの推計では、国内では年間約9万7000人の女性が新たに乳がんと診断される。学会によると近年は全体の半数(約5万人)が早期で見つかっており、今後、これらの患者は焼灼療法の対象になり得るという。

 大阪公立大病院は5月末にかけて約10例に実施した。柏木伸一郎教授(乳腺外科)は「実績を増やし、身近な総合病院でも受けられるよう医師を育成したい。治療は早期発見が不可欠。定期的な自己チェックと検診の受診をお願いしたい」と話す。(村上和史)