長崎の「被爆体験者」訴訟 控訴断念を首相に要請 知事と長崎市長、全員の早期救済も

AI要約

長崎地裁が「被爆体験者」の訴訟で一部原告を被爆者と認め、控訴断念を求める要請が行われた。

岸田首相は厚生労働大臣と法務大臣に判決を精査させ、対応を検討すると回答した。

訴訟では黒い雨が降った地域にいた原告に対して手帳交付を命じる判断が下されたが、他の地域にいた原告の訴えは退けられた。

長崎の「被爆体験者」訴訟 控訴断念を首相に要請 知事と長崎市長、全員の早期救済も

 国が定める地域の外で長崎原爆に遭った「被爆体験者」の訴訟で一部原告を被爆者と認めた9日の長崎地裁判決を巡り、大石賢吾知事と鈴木史朗長崎市長は18日、岸田文雄首相とオンラインで面談し、勝訴原告について控訴断念を要請した。勝訴原告と同様に原爆由来の「黒い雨」が降った地域にいた体験者の被爆者認定も求め、敗訴原告を含む全ての被爆体験者について「合理的な解決」による早期救済を求めた。

 非公開の面談終了後、県庁で報道陣の取材に応じた両首長によると、岸田氏は訴訟について「厚生労働大臣と法務大臣に引き続き判決を精査させ、しかるべき対応を検討させる」と回答。「地元の思いをしっかり受け止めた」との発言もあったという。武見敬三厚生労働相も同席した。

 訴訟は、被爆体験者44人(うち4人死亡)が県と市に被爆者健康手帳交付などを求め、交付事務を県と市に委託する国も訴訟に参加。長崎地裁は爆心地東側の3地区(旧矢上村、旧古賀村、旧戸石村)の一部に黒い雨が降ったと認定し、3地区にいた原告15人(うち2人死亡)に限り手帳交付を命じた。他の地域にいた原告29人の訴えは退けた。

 両首長として控訴断念を求めた理由について、鈴木氏は▽黒い雨被害者に被爆者認定基準が適用されている広島との「公平性」▽長崎地裁判決が尊重されるべき最新の司法判断であること▽被爆体験者の高齢化-の3点を挙げた。

 岸田氏は先月9日に被爆体験者の原告らと長崎で初めて面会した際、武見氏に「課題を早急に合理的に解決」するよう指示。この進捗(しんちょく)について大石氏は、この日の面談で具体的な内容についての言及はなかったとしつつ「われわれの要望と思いを伝えたことを踏まえ、速やかに検討するという話だ」と説明した。