突風全壊のイチゴ農家「子どもの笑顔のため」挑戦 シャインマスカット栽培、牧之原で好評

AI要約

2021年5月、牧之原市内で発生した竜巻による被害から、イチゴ農家がシャインマスカットの栽培に成功し、地元で好評を博している。

小関夫妻は壊滅的な被害を受けながらも、地元の子どもたちに笑顔を届けたいとの思いで挑戦し、シャインマスカットの栽培に成功した。

シャインマスカットは地域で評判となり、高い評価を得ている。晴美さん夫妻は収穫を楽しみに作業を進めている。

突風全壊のイチゴ農家「子どもの笑顔のため」挑戦 シャインマスカット栽培、牧之原で好評

 2021年5月、牧之原市内で発生した竜巻とみられる突風による被害を受けたイチゴ農家がシャインマスカットの栽培に成功し、好評を博している。「甘い果物で地元の子どもに笑顔を届けたい」との思いで同市坂部の小関弥八さん(70)と晴美さん(69)夫妻が市内では珍しい農作物づくりに挑戦した。

 「ドーン」というごう音の後に、小関夫妻は壊滅的な光景を見た。約25年前からイチゴを育ててきたビニールハウスがいびつな形につぶれていた。6棟のうち3棟が全壊。「竜巻なんて海外の話かと思っていた。イチゴは傷んで売り物にならず農業をやめようと考えた」と晴美さんは言う。

 落胆のさなか、浮かんだのは毎年イチゴ狩り体験に招待していた地元の坂部小児童の笑顔だった。「こちらが元気をもらえていた。恩返しがしたいと思った」。知人からも多くの励ましの電話をもらい、「もう少し頑張ってみるか」と農業の継続を決意した。

 小関夫妻はイチゴ農園の片隅に「なんとなく」植えていたシャインマスカットが突風前まで良好に育っていたことに注目した。苗木の本数を増やして栽培を試みたが、21、22年はハウスが壊れて農地が雨ざらしになった影響で全滅だった。諦めず土の改良を続けると、23年に千房が実を付けた。子どもたちを農園に招くことも実現した。

 甘く巨大な粒が連なるシャインマスカットは瞬く間に地域の評判となり、今年は8月上旬から約2週間で2千房が完売。市外の高級スーパーからの買い付けもあったという。

 晴美さんは「茶生産の多い牧之原でイチゴを始めた時も『何をやってるんだ』という周りの声はあった。だけど、新しいことに挑戦している時がいちばん楽しいんです」といい、来年の収穫に向け早くも作業を進めている。

 <メモ>2021年5月1日午後6時半ごろ、牧之原市の布引原、勝田・切山、坂部、須々木の計4地区で竜巻とみられる突風が発生した。市によると、住宅約100棟が半壊または一部損壊した。被害が大きかった布引原地区は風速65メートルの風が吹いたと推定され、静岡地方気象台は「竜巻の可能性が高い」とした。