【視点】「オール沖縄」は終焉に向かう

AI要約

宜野湾市長選で佐喜真氏が返り咲く。オール沖縄勢力は大差で敗れる。

辺野古移設が争点ではなくなり、玉城県政は現実路線に転換すべき。

「オール沖縄」勢力の存在意義が問われ、終焉への道をたどる可能性。

 宜野湾市長選が8日投開票され、米軍普天間飛行場(同市)の名護市辺野古移設を容認する元市長の佐喜真淳氏が6年ぶりに返り咲いた。玉城デニー市長を支え、辺野古移設に反対する「オール沖縄」勢力は元市議の桃原功氏を擁立したが、約2万4千票を獲得した佐喜真氏に対し、約8千票の大差で敗れた。

 「オール沖縄」勢力は6月の県議選に続く敗北で、退潮傾向に歯止めが掛からない。最大の要因は辺野古移設工事が進展し、移設の是非が選挙の主要争点にならなくなったことだ。

 玉城県政はこうした状況を踏まえ、移設反対の方針を見直し、移設後を踏まえた跡地利用計画の推進など「現実路線」に転換すべきだ。

 今選挙は松川正則前市長が急逝したことを受けて実施された。佐喜真氏は2018年まで宜野湾市長を2期務めたが、同年と22年の知事選で玉城氏に敗れたあと、政界復帰を模索。

 短期決戦の市長選で、知名度の高さなどを買われて自公に擁立された。選挙では一貫して普天間飛行場の早期返還を訴えた。

 「オール沖縄」勢力の桃原氏は辺野古移設に反対する立場だが、選挙戦では子育て支援などに力点を置き、辺野古への言及を避けた。

 背景には、玉城県政が辺野古移設を巡る法廷闘争で連敗し、事実上、移設を阻止する法的手段を失ったことがある。工事の進展を受け辺野古移設反対は有権者から現実的な政策とはみなされなくなりつつあるのだ。

 かつて辺野古移設が争点となった選挙では、自公候補が県民の反発に配慮して辺野古に言及せず「辺野古隠し」と批判された。宜野湾市長選では逆に「オール沖縄」が「辺野古隠し」に走る皮肉な展開となった。

 辺野古移設を巡っては、佐喜真氏の当選を受け、普天間飛行場を抱える宜野湾市が容認姿勢という状況は変わらない。移設先の名護市は渡具知武豊市長が賛否に言及していないが、政府の財政支援を受けていることから、事実上の容認と見られている。移設に反対する玉城県政の苦境は続く。

 自民党総裁選を受け、次期衆院選が11月にも行われるとの観測がある。「オール沖縄」勢力が辺野古移設阻止に向け、どのような戦略を打ち出すかが注目されるが、いずれにせよ「辺野古」のみを前面に打ち出して戦うのはもう難しい。

 「オール沖縄」は辺野古移設反対を軸に、保革を問わずさまざまな政治家や支持者がまとまった勢力とされる。しかし現状では保守層の離脱が進み「革新」への先祖返りと弱体化が指摘される。選挙で辺野古移設の是非が争点にならなければ、存在意義そのものが問われる。

 2年後の知事選が天王山になるが、既に「オール沖縄」勢力は終焉への道をたどっているのではないか。