茨城・常総水害訴訟 河川管理 責任問う 控訴審、9日に第1回弁論

AI要約

2015年9月の関東・東北豪雨で鬼怒川の堤防決壊などによる浸水被害が起き、住民らが国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審が開かれる。

控訴審では堤防未整備の地区における国の責任を争点とし、2億2000万円の賠償を求める20人の原告が関与。

住民は国の管理の落ち度を主張し、一方国は治水安全度の合理性を主張して争っている。

茨城・常総水害訴訟 河川管理 責任問う 控訴審、9日に第1回弁論

2015年9月の関東・東北豪雨で鬼怒川の堤防決壊などによる浸水被害が起きたのは河川管理の不備が原因として、茨城県常総市の住民らが国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審第1回口頭弁論が9日、東京高裁(中村也寸志裁判長)で開かれる。控訴審では、堤防が未整備だった若宮戸地区に限り国の責任を認めた一審水戸地裁判決の妥当性などが争点になる。

常総市では当時、鬼怒川沿いの上三坂地区で堤防が決壊。上流の若宮戸地区など市面積の約3分の1が浸水、5千棟以上が全半壊した。

控訴審では、訴えが認められなかった上三坂地区の住民に加え、勝訴した若宮戸地区9人のうち3人も賠償額などを不服として控訴。原告は一審の32人(うち法人1社)から20人(同)に減った。計約2億2000万円の賠償を求める。

22年7月の一審判決は、堤防未整備の若宮戸地区にあった砂丘が「自然堤防」の役割を果たしていたと認定。しかし、国が河川区域に指定しなかったため太陽光発電事業者が砂丘を掘削して「危険性を生じさせた」と国の責任を認め、同地区住民9人に計約3900万円の賠償を命じた。

国側は控訴理由書で「砂丘を河川区域に指定しなかったことについて管理の瑕疵(かし)は認められない」と反論。仮に河川区域に指定し、砂丘掘削が許可されなかったとしても「溢水(いっすい)の発生は回避できなかった」と反論している。

一方、堤防が決壊した上三坂地区について、一審判決は、治水安全度の設定や改修計画について「格別不合理ではない」として訴えを退けた。

住民側は、決壊した堤防は高さが不十分として、整備を後回しにした国の落ち度を主張。一審判決が合理性を認めた治水安全度の評価方法についても、「越水に対する安全評価ができない。判決は誤った判断」と訴える。

国側は上三坂地区について、改修計画が同規模河川の管理や社会通念に照らし「格別不合理なものと認められない」としている。

水害を巡り住民が国と争った訴訟では、「他の河川と比べ対策が遅れていなければ、行政側に落ち度はない」など行政の管理責任を限定した「大東水害訴訟」の最高裁判決(1984年)が司法判断の根幹となってきた。

住民側の片倉一美共同代表は「最高裁まで勝ち抜き『これからの判例は鬼怒川だ』となるまで持っていきたい」と力を込める。

国側は「被害に遭われた方にはお見舞いを申し上げる。過去の判例から是正が必要と考えている」としている。