値上げ商品が増える中・・値下がりする和牛?背景には何が

AI要約

スーパーでの牛肉の売り上げが減少している理由や対策について

和牛農家が抱える飼料費の高騰や生産コスト削減の取り組み

飲食店が経産牛を熟成させて提供することで肉質向上を試みている様子

値上げ商品が増える中・・値下がりする和牛?背景には何が

福岡市東区のスーパー。肉売り場に来た人に話を聞いてみると。

「(Q肉で何が1番好き)牛肉!味と食べやすさ」

「家計的には鶏肉が助かる」

「(Q何の肉を買う)豚がおいしい。牛肉は脂肪分が多いのは苦手」

「だいたい豚か鶏。金額は牛が高いから毎日のことを考えるとどうしても家計のためにも鶏とか豚になる」

ゆめタウン博多 鈴木大司さん

「(牛肉の価格)高騰で言うと1.2倍から1・3倍になっている」

外国産の牛肉は、円安の影響で大幅に値上がり。売り上げは前年の7割程度だといいます。物価高が続き、牛肉に消費者の手が伸びなくなっています。そのため店は売り場の規模を縮小。同時に客に買ってもらうための工夫もしています。

ゆめタウン博多 鈴木大司さん

「今まで取り扱いをしていなかった成型肉の販売を開始した」

成型肉とは細かい肉を加工して固めたもの。単価が安いことから今年新たに販売を開始。スーパーの売り場も物価高の対応に追われています。物価高の影響は生産現場にも。

黒毛和牛を育てている畜産農家。200頭の和牛を飼育し、年間70頭の子牛が生まれています。そのすべてがA5ランクの博多和牛です。

堀ちゃん牧場 堀田和秀さん

「(Q親子)そうですね、生まれて1カ月くらい」

堀田さんたち生産者が抱えている問題、和牛の飼育に欠かせない飼料・餌の高騰です。

「(飼料の)配合飼料は穀物なので外国に依存しないといけない。200頭いるとひと月に約100万円も増えている」

抱えている課題は他にも。連日続く厳しい暑さです。牛を守るため、天井でスプリンクラーを稼働させるほか、40台のファンで温度管理を徹底しています。電気代だけで月に20万円かかるといいます。生産コストを抑えるため取り組んでいるのが。

「牧草や稲わらは150%の自給率」

牛のふんなどからできる堆肥(肥料)を米農家へ提供する代わりに、稲わらを無償で確保しています。こちらの農家は自社で精肉した牛肉を店舗でも販売しています。飼料費の高騰で和牛も値上がりしていると思いきや。

「今はかなり肉の値段が下がっている」

なんと和牛の価格が下がり続けているというのです。その理由とは??

「(和牛の)売値が下がっているので、まだ飼料費があがりもう利益がほとんどない状態」

日本食肉市場卸売協会によりますと和牛の取引価格は年々減少傾向。2年前に比べ2割ほど落ち込んだ月もあります。その背景には、物価高のため高価な和牛を控えるという、消費の落ち込みがあるのです。

「和牛からF1(交雑牛)や乳牛、豚や鶏など、和牛より安い食材にシフトしている」

利益を確保するため、これまで1万円以上で無料だった送料を客の負担にするなど工夫を続けていますが、和牛農家はまだまだ苦境に立たされています。

 

一方、こちらは福岡市内の飲食店。新たな形で和牛を提供しています。

飲食店の店員

「60日熟成のサーロインです」

記者

「柔らかいです。油が重くなくてあっさりしています」

実はこの肉も「和牛」。しかしA5ランクなどの高級な和牛ではありません。この店がメインで提供しているのは「経産牛」と呼ばれる和牛。「経産牛」とは出産を経験した雌牛のことで、肉質が硬いとされひき肉などの加工肉として主に利用されてきました。

サシが少なく赤身の多い経産牛はステーキなどには向かないとされていますが、あるひと手間を加えて提供しています。

コウシグループ 福富康馬さん

「赤身をよりおいしく食べる1つの方法が熟成」

「熟成」です。店舗を運営するコウシグループは去年新たに自社の精肉加工場をオープン。40日から50日ほど熟成させることで水分が飛んでうまみが増し肉も柔らかくなるといいます。あえて経産牛を使用するのには現行の和牛の評価基準に疑問があるからだといいます。

「今の和牛の評価の仕組みというのが見た目の問題。極端に言うと見た目が良ければいいという仕組みになっている」

現在の肉の評価基準は「歩留等級」と呼ばれる牛1頭から得られる肉の割合と「肉質等級」と呼ばれるサシ=脂の量や肉の色などで評価されます。つまり「味」ではなく「見た目」で取引の価格が決められているのです。ところが評価が高いとされるサシの入った肉は、消費者の需要が減っているのが現状です。

「(農家は)サシの入った肉を作るしかないが需要がないというジレンマ。1番その割を食っているのは生産者であると思う。だからなんとかこの仕組みを変えないといけない」

客が求めるのは見た目ではなくあくまで味。消費者のニーズに合った評価基準が必要なのかもしれません。