トラックを通すために鉄道・電気・水道を止めた!? インド史上最大規模の超重量物輸送が熱かった!

AI要約

インド史上最大規模の超重量物輸送が実現。内陸部への1200kmの輸送距離を乗り越えるため、鉄道、電気、水道が停止された。

超特大貨物の輸送には1100軸の多軸トレーラと115台のSPMTが投入され、海路でのRORO(側方ロールオン・ロールオフ)が初めて実施された。

2022年12月から7つのコンボイを編成して、目的地の石油化学複合施設に向けて陸路で輸送が始まった。

トラックを通すために鉄道・電気・水道を止めた!? インド史上最大規模の超重量物輸送が熱かった!

 超重量物を運ぶときは、目的地の近くまで船で運び、陸送する距離をできるだけ短くします。しかし大陸国のインドでは、港から目的地までが600kmに及ぶとか……。インド史上最大規模の複合輸送を実現するため、鉄道を止め、電気を止め、水道も止めました。

 コンボイを通すためにいくつもの橋を架け、一般道を避けてバイパスまで建設するインドの超重量物輸送には、熱意とともに内陸部でのインフラ開発の大変さも感じます。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部

写真/GOLDHOFER Aktiengesellschaft・PRISM LOGISTICS

 インドで超重量物輸送などを行なっているプリズム・ロジスティクスが2022年8月から2023年7月まで、およそ1年の期間で実施した輸送プロジェクトは、インドの歴史上で最大規模かつ前例のない輸送方式を採用した画期的なものだった。

 この輸送はインドのコングロマリットで原子力発電や建設・エンジニアリングなどを行なっているラーセン&トゥブロのために実施したもの。特大サイズの大量の荷を、ハジラ、ダヘジ、マンガロールの3地域から、インド北西部でパキスタンとの国境に近いラジャスタン州バロトラ地区のパチパドラまで輸送した。

 分割できない荷姿としての最大サイズは、長さ55メートル、幅10メートル、高さ10メートル、重さ750トンというもので、インドなどでは「オーバー・ディメンショナル・カーゴ(ODC)」を超える「スーパーODC(SODC)」と呼ばれる超重量・超特大貨物だ。

 問題は、このようなSODCが34ユニットもあり、目的地が内陸部にあるため1200kmという輸送距離の半分を陸路で移動しなければならないことだ。総重量12,582トンを、のべ1100軸の多軸トレーラが支え、115台のSPMT(自走式多軸台車)が投入された。その大半はドイツのゴールドホファー製だった。

 荷は海路でグジャラート州のマンドラ港に集められ、その先は陸路となる。船舶への積み込み・積み下ろしは、通常は大型クレーンで行なうが、今回はインドの輸送史においてはじめて、超重量物の側方ロールオン・ロールオフ(RORO)が行なわれた。

 ROROは台車ごと船に載せる輸送方式のことで、港での荷扱いを省くことで輸送期間を短縮することができる。一般的なRORO船はトラクタでランプウェイを通ってシャーシ(台車)を積み込むが、ランプは急坂で重量物は超えることができない。

 そこで、接岸したバージ(自走台船)と岸壁の高さを合わせ、両者の間に鉄板を渡してバージの側方から自走台車で乗り込むことにした。当然ながら潮位・潮流と波の影響を受けスペースにも余裕がないため、ごく短時間に正確な操縦を行なわなければ、荷ごと海に転落しかねない「エクストリーム荷役」だ。

 海路でマンドラ港に運んだ荷物は港で一時保管し、2022年12月より7つのコンボイ(車列)を編成し、ラジャスタン州の石油化学複合施設に向けて陸路での輸送を開始した。