「線状降水帯」がもたらした広島土砂災害 10年前、予測できなかったのか? 気象予報士が検証

AI要約

10年前の広島土砂災害では、大雨を予測することが困難であったことが明らかになった。

当時の天気予報や雨雲の状況を振り返ると、線状降水帯の急激な発生が被害を招いた要因だったことがわかる。

線状降水帯が現在でも予測困難であり、その危険性について十分に認識する必要がある。

「線状降水帯」がもたらした広島土砂災害 10年前、予測できなかったのか? 気象予報士が検証

10年前の広島土砂災害、甚大な被害をもたらしましたが、当時、この大雨を予測することはできなかったのでしょうか。

ここからは気象予報士の山本さんに伝えていただきます。

【気象予報士・山本剛弘さん】

当時の状況を振り返るため、災害が発生した前日、2014年8月19日の夕方に実際に放送した天気予報を見ながら、当時、この大雨が予測できたかどうかを振り返っていきたいと思います。

(天気図解説)

当時解説した映像です。10年前の当時、前線が日本海に伸びていて、その南側に入っていて、大気の状態が非常に不安定だったことを伝えています。

(気象衛星ひまわり解説)

雲の様子を伝えているところです。西日本周辺に湿った空気の流れ込みに伴う線状の雲の帯が何本か見られます。線状降水帯発生の可能性を示唆するような状況になっていました。正直、当時はそこまで危険性を感じとれていなかったと反省しています。

(雨雲レーダー解説)

その時の雨雲の様子です。広島市周辺で、雨雲が発生していますが、線状の雨雲は明確にはこの時点では発生していませんでした。私もそれほど雨に注意しましょうと強くは伝えていなかった状況です。

気象台も実は、この日は局地的な大雨を予測できていなかったと、後から振り返っています。

災害が起きた当時の実際の雨雲レーダーの映像です。

(当時の雨雲レーダー)

夜に入って急激に線状の雲が広島市周辺で発生している様子がよくわかります。はっきりと線状の雲が発生しています。

当時はまだ「線状降水帯」という言葉が一般的に使われていませんでした。

天気予報士の間では「レインバンド」と呼ばれていたこともあったのですが、広島土砂災害をきっかけに「線状降水帯」という言葉が使われるようになっています。

この時の雨の様子ですが、雷が特にすごかったです。私はちょっと用事があって、この時偶然、広島市安佐南区へ車で出かけたのですが、10年経った今でも、雷と激しい雨が忘れられないです。非常に激しい雨が降りました。

実際にその時の雨の降り方をちょっとグラフにしてみたのがこちらです。安佐北区三入のアメダスの雨量なんですが。半日で256mmという記録的な雨が降りました。特に線状降水帯の下に入った午前2時から午前4時にかけて記録的な雨が観測されています。一時間に101ミリの猛烈な雨が観測されました。

ここがポイントなんです。線状降水帯の雨、「急激に雨が強まる」というのが一つの特徴。普通の大雨と違うところなんです。

線状降水帯のの現在予測なんですが、線状降水帯が発生しそうになる時、気象台から招待から大雨災害発生危険度が「急激に」高まる可能性があると、半日前から県別に発表されます。

この「急激に」というところがポイントなんです。ただ、問題点もありまして、予測が発表されても必ず発生するわけではないんです。当初から的中率は25%以下だろうと言われていたんですが、最近の検証で10%以下というふうに言われています。ただ、この線状降水帯の怖さを、皆さんに知っていただいて、こういった情報が出たときは充分気をつけていただきたいと思っています。