「デザイン経営」で生き残る企業に 天草市が事業者へ導入促進、学びの場を提供

AI要約

天草市は人材育成事業の一環で、デザイン経営の導入を促進。4年目を迎え、販路拡大や起業にも活用されている。

デザイン経営は企業価値と顧客ニーズを結びつける経営手法で、経済産業省も推奨。市はデザインプロデューサー道場を定期的に開催。

シンポジウムでは成功事例に触れ、地域課題の解決にも注力。参加者からは新たなビジネスアイデアが生まれている。

「デザイン経営」で生き残る企業に 天草市が事業者へ導入促進、学びの場を提供

 天草市は人材育成事業の一環で、ブランド構築とイノベーション(革新)によって企業の競争力向上に寄与する「デザイン経営」の導入を促進している。本格的な取り組みから4年目を迎え、販路拡大や起業に乗り出す人も。ビジネスで地域課題を解決する手段としても注目を集めている。

 デザイン経営は、マーケティングなどを用いて経営を戦略的に「デザイン」することで企業価値と顧客ニーズを結びつけ、売り上げ向上などにつなげる経営手法。企業と伴走して経営戦略を考える人を「デザイナー」と呼ぶ。経済産業省と特許庁が2018年に「『デザイン経営』宣言」を取りまとめ、天草市も同年から国主催のセミナーに参加するなどして事業者への導入促進を図っている。

 市は21年度から毎年、デザイン経営を実践的に学ぶ「デザインプロデューサー道場」を企画。全7回でさまざまな講師を呼び、デザイン経営の考え方のほか、事業者が抱える課題の解決に実践形式で取り組む学びの場を提供している。

 市産業政策課は「天草には豊富な資源がありながら、マーケティングをしなかったり商品の価値をうまく伝えられなかったりと、戦略がない事業もある。デザイナーを育成し、経営戦略の土台をつくるお手伝いをしたい」と強調する。

 7月8日には天草市内でシンポジウムがあり、博報堂ケトル(東京)の日野昌暢チーフプロデューサーと、ボーダレス・ジャパン(福岡市)の田口一成社長が講演した。

 日野氏は、群馬県高崎市の飲食店や名物料理などを応援するウェブサイト「絶メシリスト」を考案したことに触れ、「なくしたくない店の料理を『絶メシ』と名付けることでみんなが使う言葉になり、その価値が認識された。人に伝えたくなる内容を内包させることが大事」と助言した。

 ビジネスで社会課題の解決に取り組む田口さんは、バングラデシュで革製品の工場を造り、現地の貧困層の雇用を創出した事業を紹介。「どんな課題があり、その原因を見つめ、どのように対策を取るかがとても重要だ」と指摘した。

 シンポジウムに参加し、過去に「道場」も受講した天草市の女性(41)は女性限定のバーを近く開業予定。シングルマザーや生きづらさを抱える女性の居場所づくりを目指しており、「お客さん目線を意識することで自分の武器に気づかせてくれ、参考になった」と話した。

 「道場」には過去3回で計45人が受講し、28件のプロジェクトが企画された。市産業政策課は「付加価値を持たせることで稼ぐ力を付け、将来にわたって生き残る企業になってほしい」としている。今年の「道場」は、22日から全7回。(福井一基)