「臨時情報出ている今なぜ」「裏金、幕引きにならぬ」 首相退陣表明、静岡県民も驚き

AI要約

岸田文雄首相が次期自民党総裁選に不出馬の意向を示したことについて、静岡県内では驚きや戸惑いが広がっている。

一部の県民は成果を評価する一方で、岸田首相の退陣理由に対して冷ややかな反応を示している。

複数の意見が存在し、首相の退陣に対する賛否両論が見られる。

 「なぜこの時期に」ー。岸田文雄首相が次期自民党総裁選に不出馬の意向を示した14日、静岡県内でも突然の発表に驚きや戸惑いが広がった。県民からは株価回復などの成果を評価する声が上がる一方で、「政治への共感を取り戻すために身を引く」とした岸田首相の退陣理由には冷ややかな反応が目立った。

 「株価上昇や賃上げを実現し、消費は上向いているところ。評判とは別に成果を上げていたのでは」。岸田首相の経済政策を評価する浜松市中央区の会社役員前嶋文明さん(73)は退陣表明に戸惑いを口にした。同市に子連れで遊びに来ていた袋井市の女性(43)は「急に何があったのか」と驚き、南海トラフ地震臨時情報が出ている中での発表に「今でなくてもいいのでは」と首をかしげた。

 一方、内閣支持率低迷が続き、「予想通り」と受け止める人も。Uターン就職に向けて求職中という湖西市の熊木康平さん(31)は「『増税メガネ』とやゆされ、国民の評価が厳しかった。党全体としての判断では」と推測し、富士市の茶農家水野直樹さん(39)は「良いところが見つからない。出馬しても勝てなかったのでは」と語った。

 首相在任中は政治とカネの問題が次々と発覚した。静岡市葵区の会社員兼田真宏さん(50)は「周囲でさまざまな問題があり、責任が問われただけで、岸田さん自身は尽力してくれた印象」と同情的。浜松市天竜区の男性(68)も「裏金問題の解決に頑張っていたと思う。(不出馬は)もったいない」と惜しむ。

 反対に、長泉町の山田文枝さん(74)は「責任を取るなら続けるべきだ。違う人に引き継いだところで裏金問題の解決にはつながらない」と冷めた見方。富士宮市のパート従業員高橋まりのさん(28)は「辞めれば解決するものではない。次の選挙で勝つための戦略と感じられて嫌だ」と批判した。松崎町の飲食店経営田代啓さん(57)は「内輪で政治が行われ、国民は置き去りになっている。次の首相には清い政治を」と徹底した改革を求めた。

■塩谷氏「遅きに失した」

 岸田文雄首相の自民党総裁選不出馬表明を受け、4月に同党を離党した無所属の塩谷立衆院議員(比例東海)は14日、「政治資金の問題に責任を取ることが理由であるならば、遅きに失した感は否めない」と事務所を通じてコメントした。3年前の総裁選で首相が掲げた党改革への本気度や国民に寄り添う寛容なリーダー像に「期待を寄せて支持した」と振り返りつつ、「今は複雑な思いがある」とした。

 派閥パーティー裏金事件で安倍派の座長を務めていた責任などを問われ、離党勧告処分を受けた塩谷氏。処分決定時には「今回の問題は党全体の問題。岸田総理の責任も問われるべきだ」などと批判していた。

 同じく安倍派に所属して還流金の政治資金収支報告書への不記載があり、その後に発覚した女性問題で衆院議員を辞職した宮沢博行氏は取材に「裏金問題も大きな理由だろうが、支持率の低迷が大きく響いたと思う。仕方がない」と述べた。

■県内経済界「少々唐突」

 岸田文雄首相の自民党総裁選への不出馬表明を受け、県内経済界からは戸惑いの声や新体制への注文が寄せられた。

 静岡商工会議所の岸田裕之会頭は、賃上げ推進など脱デフレに向けた重要課題に正面から取り組んだ岸田政権を評価した上で「中小企業の経営に対する先行き不安感は強まっている。政府与党は政治的空白が混乱を招かないよう、適切な政策運営を」と求めた。

 浜松商工会議所の斉藤薫会頭は「政治とカネを巡る国民の政治不信が高まる中、このタイミングでの不出馬表明は少々唐突に感じる。政治への信認を取り戻す形で、政治責任を果たしていただきたかった」とコメントした。