パリ五輪マラソン 熱くなるレース見せたい 黒木純強化コーチ(三菱重工総監督)

AI要約

男子と女子のパリ五輪マラソンに向けた調整状況を伝える。男子はほぼ完璧な状態で、女子もいい調整ができている。選手全員が状態をそろえている希少な状況。

男子選手は小山、赤崎、大迫が注目。小山は着実に上昇し、赤崎は軽い走りを生かす。大迫は経験豊富でエースとして期待。女子は鈴木、一山、前田が重要視。前田の記録更新で世界との戦いを展望。

レース前の調整は、キャンプ地でのメニュー調整や日本と同様の生活を心がけ、過酷なコースに備える。疲れがたまりやすい区間や気温への対策がポイント。

パリ五輪マラソン 熱くなるレース見せたい 黒木純強化コーチ(三菱重工総監督)

 パリ五輪の最後を締めくくるマラソンが、いよいよ号砲を迎える。10日に男子、11日には女子が花の都を駆ける。本番を前に、日本の黒木純マラソン強化コーチ(53)=三菱重工総監督=に各選手の調子やレースのポイントを聞いた。

 -仕上がり具合は。

 男子に関しては合宿、練習の流れ、全てにおいてほぼ完璧な状態。いいレースが期待できる。女子は、男子ほどではないけれど、トータル的にいい調整ができた。これほど6人全員が状態をそろえている大会は、なかなかない。

 -日本記録保持者や前保持者がいて、若手も中堅もいる。

 男子から言うと、小山はマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)の優勝以降も力をつけている。物おじしない。練習を見ていても着実に上がっているなという印象。赤崎は特性の軽い走りを生かしてくれたら勝負できる。百戦錬磨の大迫はエースとして引っ張ってもらいたい。

 女子の鈴木は若く、これから日本の中心になるために貴重な経験にしてほしい。一山と前田は前回の東京五輪を走っているので緊張感を分かっている。選考レースで日本記録を出した前田には、日本が世界と戦う扉を開いてほしい。

 -日本を出発してここまで、どういう調整をしてきたのか。

 8月3日ぐらいから、おのおの事前キャンプ地のセルジーに入って、各自のメニューで調整してきた。レース直前、男子は9日、女子は10日に選手村に入る。セルジーはパリの北西にある街。一つのホテルを貸し切って日本から調理師を呼び、日本食材を持って来た。日本と極力変わらないように、不自由ない生活を心がけてきた。

 -急勾配、石畳の凹凸がある路面で、大会史上最も過酷なマラソンになると言われている。

 史上まれに見る難コースであることは間違いない。27キロ地点から箱根駅伝5区クラスの上り坂が1キロ以上あって、間違いなく疲労がたまる。さらに急な下りで足にダメージが来ることを注意しないといけない。後半にきついアップダウンを走った後、さらに10キロ走るのは相当、足に負担がかかる。対策として、終盤まで足が残るような体のつくり方をやってきた。

 また、途中で道が狭くなったり、石畳でボコボコ道だったり。最初は大きな集団で行くので、特に足元に気を付けた方がいい。気温は日本の酷暑に比べると全然。40キロ付近では20度を超えてくるので、そこまでいかに余裕を持てるか。

 昨年に2度、まずスタッフが視察して、MGCが終わった後から選手も順に下見した。

 -オペラ座、ルーブル美術館、ベルサイユ宮殿、エッフェル塔など名所満載の42・195キロ。史上初めて、レース当日に同じコースで市民マラソンが計画されている。

 スポーツは多くの人で盛り上げるもの。このスタジアム(スタッド・ド・フランス)に来ても分かるように、日本で陸上にこんなに人が集まる大会はない。みんなで楽しみながら戦う、イベントチックな概念がフランスにあると感じている。沿道の観衆もきっとすごい。選手は力をもらい、気持ちを乗せて走ってほしい。五輪の締めくくりがこのマラソンなので、日本国民が熱くなるレースを見せたい。