肥大化した「全中」改革は是か非か 27年度から9競技除外 フィギュア島田麻央「なくなるのはさみしい」

AI要約

全国中学校体育大会(全中)が2027年度から9競技を取りやめることになり、関係者に動揺が広がっている。

競技の縮小は、教員の負担軽減や持続可能性を考慮して行われたもので、府内の多くの部や生徒に影響を与える可能性がある。

今回の変更は全中の歴史的な転換であり、中体連が競技ごとの違いや持続可能性を考慮して決定したものである。

肥大化した「全中」改革は是か非か 27年度から9競技除外 フィギュア島田麻央「なくなるのはさみしい」

 全国中学校体育大会(全中)で2027年度から9競技が取りやめられることになり、京都府内の関係者に動揺が広がっている。少子化や教員の負担軽減などを踏まえ、日本中学校体育連盟(中体連)が大幅な縮小方針を打ち出した。

 取りやめになるのは、水泳、ハンドボール、体操、新体操、ソフトボール男子、相撲、スキー(30年度から)、スケート、アイスホッケー。府内にはこれらの競技で全国的に活躍する部や生徒もおり、目標がなくなってしまうことによる影響が懸念されている。

 全国中学校体育大会(全中)での実施競技の縮小は、日本中学校体育連盟(中体連)が2022年度に活動実態を調査し、全校に対する「部活動設置率」が原則20%未満の競技を選んだ。現行の20競技からほぼ半減する。夏季大会は全国8ブロックの持ち回りで実施されており、縮小される27年度は近畿開催となる。

 除外される競技では、京都府内の中学生も好成績を上げてきた。昨年度はハンドボールで大住中(京田辺市)が女子4強、男子8強に進出。新体操では京都聖母学院中(京都市伏見区)が団体3位に入った。水泳やスケートでも上位に躍進した。

 ハンドボール部の設置率は全国で男子6・9%、女子5・7%。府内の中学校のある顧問は「京都は全国大会で活躍し、日本代表も輩出している。これだけしかいない、のではなく、頑張っている子がいることに目を向けてほしかった。本当に残念」と打ち明ける。その上で「日本協会と一緒に、代替となる大会を模索できればと考えている。目標をしっかり設定してあげないといけない」と語る。

 民間クラブを拠点に活動する選手にとっても、全中は特別だ。出場経験者からは残念がる声が上がる。

 フィギュアスケートで21~23年度に3連覇した島田麻央さん(木下アカデミー、宇治市・広野中出)は「こんなに大勢の中学生が一緒に試合することはない。楽しみにしていた大会なので、なくなるのはさみしい」と話す。水泳で出場した京都外大西高3年の須磨湧希さん(山科区・音羽中出)は「中学での最終目標が全中だった。同じ学校の仲間とリレー種目で出場を目指すことが楽しく、クラブチームの大会とは違う目標があった」と振り返る。

 府相撲連盟の田村直也理事長は「競技人口が減っている中で、悪循環になるかもしれない」と危惧する。全中からの除外が今月8日に発表された翌日には、京都市内で中学生の大会が行われていた。「熱心な指導者は『目標がなくなる』と怒る人もいたが、競技者が減っているのも事実で、冷静に受け止める声もあった」という。

 府中体連の杉本清彦会長(宇治市・槇島中校長)は中体連の評議員会で今回の改革について説明を受けた。「子どもの側に立つと目標が減ってしまうのは申し訳ない。部活動の入部を考える生徒にどう影響するか」と心配する。全中の予選を兼ねた府内や近畿の大会については「今後、早急に議論しないといけない」としている。

「大会が大きくなりすぎた」根本的な要因全中の歴史に詳しい早稲田大スポーツ科学学術院の中澤篤史教授(スポーツ社会学)に、大会規模の縮小の背景について聞いた。(聞き手・山下悟)

 1979年に始まり拡大し続けてきた全中が、初めて縮小される。歴史的な転換となる大きな決定だ。

 大会が大きくなりすぎたことが根本的な要因だ。競技数、参加生徒数が増え、財務が膨らんだ。教員の負担も大きく、以前から持続可能性が問われてきた。

 そもそも全中は、競技団体任せにして勝利至上主義に陥ることを危惧し、教育者が運営を引き取る形で始まった。一方で教育的な平等の論理からさまざまな種目を抱え込むことになり、肥大化につながった。

 除外の基準となった「原則20%未満」という数字をどう評価するかは難しい。ただ、これまでの平等志向一辺倒から、今回の決定では参加比率など競技ごとの違いに目を配り判断をした。これは中体連の考え方として非常に大きな変化だ。冷徹に映るが、持続可能性を考え、引き受けられる範囲を決めたのだろう。

 除外された競技では、民間クラブの選手が中学の所属という形にして出ることも多い。そこに学校教育の成果はあったのか。大会を運営する中体連は疑問を感じていたのではないか。

 競技の強化や普及にネガティブな影響は出ると思う。あえて厳しい言い方をすると、競技団体は強化や普及を中体連に依存してきた。部活動は教育のためにある、ということを捉え直すべきだ。

 今回の決定について、中体連はステークホルダー(利害関係者)に説明する責任がある。全中の改革をきっかけに、運動部活動全般の見直しを進めてほしい。