【デブリ安全確保策】知見持ち寄り議論を(7月29日)

AI要約

東京電力福島第1原発のデブリ取り出しに向けた安全確保策について、本格的な作業が始まる準備が進められている。

東電とNDFが作業方法を慎重に検討し、デブリの試験採取や具体的な取り出し作業に向けた方針を示している。

作業の効率性やリスク管理について、様々な視点や専門家の意見を踏まえて、安全を図りながら進めることが重要だ。

 東京電力福島第1原発1~3号機に残る溶融核燃料(デブリ)の本格的な取り出しに向け、東電と原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)は安全確保策の策定に着手した。放射線量が極めて高く、前例のない最難関の作業となるため、安全には万全を期す必要がある。一方で、復興を進める上では廃炉の加速化も重要だ。双方のバランスを考慮し、内容を慎重に検討するよう求めたい。

 東電は、初のデブリの試験採取を2号機で8月にも実施する。数グラムから徐々に量を増やし、性状や原子炉内の状況を確認した上で、本格的な取り出しを2030年代に3号機で始める方針だ。NDFは、空気に触れた状態のデブリに水をかけながら引き上げる気中工法と、セメントのような物質で固めて掘り出す充塡[じゅうてん]固化工法を組み合わせるのが最も現実的との見解を示している。

 二つの工法を併用した作業の具体化には、起こり得るリスクへの対処と綿密な評価が不可欠だ。例えば、デブリの臨界をどの程度まで許容するかによって、施設の構造や作業内容は変わってくる。核分裂を完璧に防ごうと対策を強化した結果、一部の作業が制約されて現場に新たな負担が生じたり、取り出し完了が大幅に遅れたりする事態は避けたい。

 ある程度の臨界を予測した上で、防護態勢をしっかりと構築した方が作業全体の効率性が向上するのではないかといった指摘もある。いずれにせよ、作業員と周辺環境に影響を及ぼさないのが大前提で、各方面の知見を持ち寄った議論が欠かせない。

 放射性物質の飛散対策をはじめ、デブリの保管方法、非常用電源の確保、耐震化など検討すべき項目は少なくない。東電とNDFは今秋から原子力規制委員会と意見交換し、互いに情報を共有しながら方向性を探るとしている。さまざまな問題点を丁寧に洗い出し、最善の方策を見いだしてほしい。

 東電は、非常時の迅速な医療措置を可能にする連携協定を今月、福島医大と結んでいる。福島医大は国の高度被ばく医療支援センターに指定され、専門とする分野は多岐に及ぶ。幅広い知見を現場の安全確保に生かす取り組みにも期待したい。(角田守良)