費用縮減だけじゃない、水泳授業の民間委託はいいことづくめ? 鹿児島市教委が試行中 見えてきた効果とは

AI要約

全国の学校でプールの老朽化に伴う改修や維持管理費の増加が課題となる中、鹿児島市教育委員会は、民間に水泳の授業を委託する試みを始めた。費用だけでなく、教員の負担軽減や子どもの泳ぐ力の向上も期待されている。

水泳の民間委託は、市教委が本年度から実証的に始めた「学校プール共用化等検討事業」の一環。花尾小と南方小をモデル校とし、移動費など251万円を計上した。市立学校には築年数が40年を超すプールもあり、改築費や維持管理費の縮減が狙いだ。

全国各地で始まっている水泳の授業を民間委託する試みについて、鹿児島市教委は来年度以降に向けて、さらなる検討を進める委員会を設置する方針だ。教員の負担軽減やプール施設の長期的な維持管理費の削減が期待されている。

費用縮減だけじゃない、水泳授業の民間委託はいいことづくめ? 鹿児島市教委が試行中 見えてきた効果とは

 全国の学校でプールの老朽化に伴う改修や維持管理費の増加が課題となる中、鹿児島市教育委員会は、民間に水泳の授業を委託する試みを始めた。費用だけでなく、教員の負担軽減や子どもの泳ぐ力の向上も期待されている。

 水音と子どもたちの元気な声が響く。7月上旬、鹿児島市の「はまだスイミングスクール」で花尾小学校(全校児童15人)の水泳の授業が行われていた。「泳ぐ時の顔は、前と下のどっちに向けるかな」。ビート板でクロールを練習する3年生に、男性インストラクターが尋ねる。児童が「下」と答えると、満足そうにうなずいた。

 花尾小は本年度、水泳の授業を民間に委託。学校からバスで片道約20分かけて移動し、屋内プールで学級ごとにインストラクターの指導を受ける。5回目となるこの日は、15メートルを泳ぎ切る時間を計測。参観に訪れた保護者は「専門の指導者に教えてもらえるので安心感がある」と話した。

 授業内容や構成はスクールと学校が事前に協議して決めた。インストラクターが指導、教員は評価を受け持つ。丸山拓真チーフインストラクター(29)は受け入れにあたり、安全対策を見直した。「安全に楽しく学び、水泳を好きになってもらえたら」と話す。

■□■

 水泳の民間委託は、市教委が本年度から実証的に始めた「学校プール共用化等検討事業」の一環。花尾小と南方小(50人)をモデル校とし、移動費など251万円を計上した。市立学校には築年数が40年を超すプールもあり、改築費や維持管理費の縮減が狙いだ。

 花尾小のプールは1971年開設。コンクリートなどが劣化し、定期点検や修繕が欠かせない。プール開き前の清掃は、保護者らも協力。使用する間は体育主任が毎朝30分以上かけ、火山灰や木の葉を取り除く。

 三宅徹哉教頭(46)はスイミングスクールへの委託で「子どもたちに泳ぐ技術が身に付いた」と手応えを感じている。同行する教員を輪番にすることで、働き方改革にもつなげられているという。

■□■

 全国では、学校プールの水を教員が止め忘れる事案が続発。文部科学省とスポーツ庁は10日、「プールの管理が教師にとって過度な負担につながっている」として、管理業務の民間委託や外部プールの活用を提言。水泳の授業を民間委託する試みは鹿児島市のほか、福岡市や京都市など、全国各地で始まっている。

 来年度以降に向けて、鹿児島市教委は4月、事業の一環で教員や保護者、学識経験者らでつくる学校プールの共用化を検討する委員会を設置した。

 プールの規模や稼働率によって異なるが、1校あたりの維持管理費、修繕費は年間で平均約100万円。検討委では民間への委託料や移動費と学校プールの長期的な修繕費や改築費を比較するほか、市営プール活用なども検討するという。

 市教委保健体育課の山口伸一課長は「それぞれの効果や課題を整理し、どのように拡大していけるか考えたい」と話した。