立ち入り禁止になったシンボルの森「トントン山」再生へ インフルエンサーらに学び再生法議論 CF始めた福岡市・小笹小6年生

AI要約

福岡市中央区の市立小笹小の敷地内にある高さ20メートルほどの森「トントン山」は、3年前から立ち入り禁止となっている。

児童たちの遊び場として親しまれてきたが、再生を目指すためにクラウドファンディングを行っている。

児童自らが取り組む主体的な取り組みで、再生を目指している。

協力呼びかけ活動や資金集めを行っており、地域の人々からも支援を受けている。

学習の場としても利用されるトントン山は、再生が進むことでさらに人々を引き付ける場所となることが期待される。

学校の歴史や児童の思いも絡めながら、トントン山の再生に向けて取り組んでいる様子が伝えられている。

立ち入り禁止になったシンボルの森「トントン山」再生へ インフルエンサーらに学び再生法議論 CF始めた福岡市・小笹小6年生

 福岡市中央区の市立小笹小の敷地内に高さ20メートルほどの森がある。「トントン山」と呼ばれ、児童たちの遊び場として長年親しまれてきた場所だが、約3年前から立ち入り禁止となっている。人の出入りがなかったコロナ下に雨で土が流れて遊歩道の階段が埋もれたり、木が倒れたりして危険になってしまったためだ。再び遊べる環境に戻すため、6年生約140人が「総合的な学習の時間」に再生方法を議論。資金を募るクラウドファンディング(CF)を7月から始めた。

 「ポスターを貼らせてください」。1日、同校6年生の3人が地元の生花店に足を運び、協力を呼びかけた。ポスターは児童たちの手作り。山の写真をちりばめ、「卒業生のみなさんも遊んだトントン山が危機です」などの文言も。CFのウェブサイトにつながるQRコードも添えた。

 対応した店主、野口智之さん(60)は掲示を快諾。自身も同校の卒業生であり、在校時には山で遊んだ。当時は車のタイヤで作った遊具が斜面にあったという。地域の掲示板にもポスターを貼れるよう、その場で知人に電話で依頼。地元の飲食店や理髪店、幼稚園などにも声をかけることを子どもたちに提案した。

 目を丸くして聞いていた仲田悠馬さん(11)は「思っていたよりもたくさん協力してくれそうな人がいて、資金集めの手応えを感じられた。山が再生すれば鬼ごっこや虫取りがしたいし、地域の人も招待したい」と声を弾ませた。

 学校に残る記録などによると、トントン山は1967年に整備された。当時の校長が「生きた教材にしよう」と発案し、保護者や教員たちで遊歩道を作った。当時の児童から名称を募集し、2年生の案を採用。病気の母親の肩を「トントン」とたたいていたことと、軽やかに山を登る足音から名付けたという。

 山開きを伝える当時の新聞記事には、斜面地に並んだタイヤを上る児童の写真のほか、歌も添えられていた。この歌を記した看板は山の麓に立っている。

 住民らによる手入れも行われてきたが、コロナ下の2020年度に中断。その間の大雨で土が流れたとみられ、21年度の途中から立ち入り禁止に。22年度には市教育委員会の予算で、腐った木材の撤去や擬木で作った階段の移設を行った。

 23年度に着任した才守美穂校長(58)は、児童たちから「山には、いつ入れるのですか?」とたびたび聞かれた。「早く再生しないとね」という住民の声も。休み時間の遊び場だけでなく、生活科や理科の学習でも使われていた学校のシンボル。多くの人の願いが重なり、再生に向けた動きが24年度に本格化した。

 4月、6年生がクラスごとに山の現状を確認してみると、土がえぐれた場所や倒木もあり、自力での整備は難しいことが分かった。授業で話し合い、業者に依頼するための資金集めが必要と判断。地域の人だけでなく、幅広い人たちの協力を募るためにCFに挑戦する方向性が固まった。

 外部講師を学校に招く事業を行う福岡市の松下ゆか理さん(41)の協力もあり、CFの伴走支援をする事業者、交流サイト(SNS)で大きな影響力を持つ「インフルエンサー」、コピーライターらによる授業を実施。子どもたちはCFの仕組みや成功させるためのコツ、耳目を集めやすい発信方法などについて学習した。並行して、始業前の朝に有志の児童と教員が集まり、山に積もっている落ち葉の掃除にも汗を流した。

 一方、見積もりを業者に依頼すると、麓から山頂まで2本の遊歩道を整備し、木の根元に土留めを置く工事にかかる費用が計約280万円だった。これを受け、CFの目標を300万円に設定。倒木の撤去費は市教委が負担するという。

 才守校長は「与えられた課題ではなく、子どもたち自身が考えた主体的な取り組みになっている」と意義を語る。遊びや学習の場となってきたトントン山は今、「再生させる」という形で子どもたちの教材になっている。

 CFは9月25日まで。寄付者へのリターン(返礼品)として、子どもたちがトントン山の葉っぱを使ったしおり、木を材料にしたコースターを製作する。