小中学校のプール授業に変化の波 民間スクールのインストラクターが指導「ターンうまくなった」

AI要約

小中学校の水泳授業を民間のスイミングスクールなど外部に委託する自治体が増えている。屋内プールでの授業は、天候や気温に左右されない利点があり、子供たちの泳力向上にもつながる。

京都や滋賀を含む自治体では、老朽化した学校プールの更新費用削減も狙いとして、民間施設への委託を推進している。児童や保護者の評判も高く、授業を楽しんだり泳力向上を実感したりしている。

専門のインストラクターから指導を受けることで授業の質が向上し、教員の負担も軽減される。屋内なら授業が安定して実施できるため、様々な自治体で民間委託が増えている。

小中学校のプール授業に変化の波 民間スクールのインストラクターが指導「ターンうまくなった」

 小中学校の水泳授業を民間のスイミングスクールなど外部に委託する自治体が京都や滋賀で増えている。学校プールの老朽化が進んでいる上、猛暑の影響で屋外での計画的な授業実施が難しくなっているためだ。屋内プールなら天候や気温に左右されずに授業でき、プロのインストラクターから専門的な指導を受けられる。教員の働き方改革につながるとの見方も相まって、推進力となっているようだ。

 京田辺市は本年度から、全9小学校の児童約4300人の水泳授業を民間2施設に委託した。

 4月下旬、JR松井山手駅前のフィットネスクラブを訪れると、桃園小児童がプールで水しぶきを上げていた。8~10人ずつ7グループに分かれた5年生約70人のうち、ほとんど泳げないグループは顔を水に付けたり、鼻から息を吐いたりする練習からスタート。水泳が得意な一群は、クロールや平泳ぎ、バタフライにまで挑戦した。北村忠浩校長は「専門のインストラクターが子どもの泳力に合わせて指導してくれるので、確実に授業の質は向上する」と期待する。「プールの掃除や水質管理をしなくていいので、教員の労力も軽減されるだろう」と話した。

 同市教育委員会によると、9校のプールはいずれも設置から40年を過ぎて老朽化が進む。各学校のプールで水泳授業を続ける場合、1校当たり約2億円の更新費や年間110万円の維持費がかかり、今後30年間の総費用は9校で約26億円と見込まれた。一方、民間プールを活用してインストラクターから指導支援を得る委託の場合、児童を送迎するバス代を入れても費用は30年間で約19億円と割安だった。

 子どもたちの評判も上々だ。桃園小3年の女児は「(インストラクターから)ターンのやり方を教わった。分かりやすかった。シャワーが冷たくないのもいい」と笑顔だった。市教委が2023年度にスイミングスクールでの授業を体験した児童や保護者を対象に実施したアンケートでは、児童の8割が「(授業が)楽しかった」と答えた。保護者は9割が「良かった」と評価し、子どもの泳力についても6割が「向上したと感じる」と回答した。

 屋内なら安定して授業ができるのも学校にとって大きい。

 屋外では雨や雷で中止になる上、水温が高すぎても熱中症のリスクから中止せざるを得ない。市教委によると、水泳授業は6、7月に10コマ程度を予定するが、22年度は平均4コマしか実施できなかった小学校もあったという。委託先の施設に移動するのにバスで片道10~20分かかるのがネックだが、遠方の小学校は休み時間を移動に充てている。

 京都府内では福知山市も本年度から全小学校の民間委託を始めた。京都市、京丹後市、綾部市、宮津市、木津川市、八幡市の一部小学校も民間プールを活用し、専門のインストラクターから指導を受けている。城陽市は4中学校の水泳授業を民間委託している。

 滋賀県内は高島市が22年度から一部小中学校で導入。本年度は8小学校と5中学校の水泳授業を民間委託する。守山市は本年度から小中各1校で民間プールを使ったモデル授業を始めた。小学校では教員が指導する場合とインストラクターが教える場合の教育的効果を比べて来年度以降の実施方法を検討するという。

 京滋ともに、公共施設など学校外のプールで、主に教員が指導するスタイルで実施する市町もあった。

 鳥羽高水球部の元監督で、水泳指導に詳しいびわこ成蹊スポーツ大の川合英之教授(保健体育科教育法)は「学校教育活動として実施する場合は、単に泳力(技能)向上だけを目的とするのではなく、子どもたちの課題解決のための思考力・判断力の育成や水難事故防止などの側面も重視する必要がある。教員は引き続き授業の組み立てや評価を担い、専門の指導者と連携しながら子どもたちに必要な力を伸ばすことが求められる」と話している。