コメが足りない! 直売向け激減、注文殺到でネット販売中断も 全国的に需給バランス悪化

AI要約

広島県世羅町で2023年産米の品薄になり、道の駅に納品する団体が減少している。

需要の増加や東北地方の不作などが影響して全国的に需給バランスが崩れた状況。

一部地域ではコメの完売や品薄になるほどの高騰が発生し、生産者や販売業者が対応に追われている。

コメが足りない! 直売向け激減、注文殺到でネット販売中断も 全国的に需給バランス悪化

 米どころとして知られる広島県世羅町で、直売向けの2023年産米が品薄になっている。道の駅に納品する団体が激減し、注文が殺到してインターネット販売を中断した企業もある。販売側だけでなく、生産者にも在庫確認の電話が相次ぐ。東北地方での不作やインバウンド(訪日客)の増加により、全国的に需給バランスが崩れた影響とみられる。

 「今シーズンは終了」「在庫限り」…。道の駅世羅(川尻)の売り場では6月中旬から、コメの完売や品薄を知らせる紙が張られ始めた。普段は常時12、13団体が米袋を並べるが、現在は4団体しか納品がない。販売スペースは半分以下に縮小した。

 運営する町観光協会の土田昌克・道の駅世羅担当課長は「開業以来こんなことは初めて。最近は連日のように、消費者から在庫の問い合わせがある」と話す。

 6月中旬は市場でコメが高騰し始めた時期と重なる。コメ生産販売会社「こめ奉行」(上津田)ではホームページからの注文が例年の同時期の10倍となり、販売をストップした。23年産米は約1200トンを取り扱う大手ながら、注文数が高止まりすると既存の取引先に供給できなくなる恐れがあるためだ。

 同社役員の重田弥生さん(31)は「8月半ばの新米まで再開できない。ネット販売を始めて10年くらいで経験がない」と驚く。

 備後地方の別の米穀業者によると、業務用に使うための問い合わせが多いという。「普段付き合いのない大手や個人からも引き合いがある。昨秋に決めた仕入れ計画から外れる注文は、ここ1カ月くらい断っている」と明かす。

 こうしたやりくりもあり、同町で栽培したコメが品切れになることはないと各業者はみる。ただ需給が逼迫(ひっぱく)する中、問い合わせは町内の複数の農業法人にも及んでいる。

 23年産米は、東北地方を中心とした昨夏の高温被害の影響などで、主食用の収穫量が減少。訪日客の回復なども影響もあり、全国のスーパーの6月上旬の平均価格は、5キロで2千円に迫る高水準となった。

 新型コロナウイルス禍では、需要低迷で米価が下がり、農業者の経営を圧迫した。こめ奉行の重田さんは「今秋の米価は上がると見込まれているが、急激に上げると翌年以降大きく下がる可能性がある。農家目線で言えば、将来苦しむかもしれないような状況にはならないでほしい」と気をもんでいる。