狙われた介護現場“法人の私物化”とは 全国でも横行…専門家「見抜くための法の見直しが必要」【現場から、】

AI要約

静岡市の社会福祉法人で起きた横領と贈収賄事件。介護サービスの運営資金が私物化される事例が明らかになった。

裁判で懲役1年6か月執行猶予4年の有罪判決を受けた医師の男。賄賂を受け取り、他の人物に理事長の座を譲り渡した。

新たな理事長と無職の男が共謀し、社会福祉法人の口座から7400万円を抜いて賄賂を渡すなどの犯行が明らかになった。

狙われた介護現場“法人の私物化”とは 全国でも横行…専門家「見抜くための法の見直しが必要」【現場から、】

静岡市の社会福祉法人を舞台に起きた横領と贈収賄事件。介護サービスの利用者のための運営資金が抜き取られる背景には、全国でも後を絶たない“法人の私物化”の実態がありました。

<静岡地方裁判所 國井恒志裁判官>

「社会福祉法人の高い公益性と非営利性を無視した悪質性の高い犯行」

裁判官のほうをじっと見つめ静かに判決を聞いた男。7月9日、社会福祉法違反の収賄の罪で懲役1年6か月執行猶予4年の有罪判決を受けた医師の男(48)です。

犯行の舞台となったのは静岡市清水区の特別養護老人ホーム。運営する社会福祉法人の理事長だった男は、2000万円の賄賂を受け取る代わりに、理事長の立場を特定の人物に勝手に譲り渡しました。

<特別養護老人ホームの施設長>

「25日に(従業員に)『給料が入っていないよ』と言われて、初めて知った。(新たな理事長は)『これからここの理事長をやります』といったあいさつなどもなく、(施設の運営に)入ってきたので、私たちの中では『この人たちは何者?』みたいな」

男に2000万円の賄賂を渡したとされるのは、施設に縁もゆかりもない2人の男でした。

<伊豆川洋輔記者>(2023年11月)

「都内にある自宅マンション駐車場から容疑者を乗せた捜査車両が出てきました」

業務上横領と社会福祉法違反の贈賄の罪で逮捕・起訴されたのは、新たな理事長の男(43)と、無職の男(52)です。2人は共謀して、ポストを譲り受けた社会福祉法人の口座から約7400万円を抜き出し、その金の中から現金2000万円の賄賂を渡した罪などで現在、公判中です。

施設の運営権をまるごと奪う手口。なぜ社会福祉法人が狙われるのでしょうか。専門家は税金と介護保険で賄われる介護報酬を狙った犯行だと指摘します。

<社会福祉法人に詳しい 宗澤忠雄さん>

「特別養護老人ホームは突出して大きな予算を動かしていると。お金を私物化する、お金を抜くというようなことの目のつけやすさにつながってきたのだと思います」