起業家精神(7月2日)

AI要約

半世紀前、都内の書店に一冊の雑誌が並んだ。映画や演劇、コンサートの情報を載せた月刊誌「ぴあ」。2011年に休刊するまで愛好家に親しまれた。

大学生だったいわき市出身の矢内広さんが友人らと創刊した「ぴあ」は、映画やイベント情報をまとめた斬新な媒体として人気を博し、後にチケット販売サービス「チケットぴあ」に発展した。

福島高専出身の若手女性起業家たちは、地域の課題をビジネスチャンスと捉え、それぞれの事業で地域社会に貢献している。先輩起業家からのエールを受け、困難に立ち向かいながらも未来に向けて進んでいる。

 半世紀前、都内の書店に一冊の雑誌が並んだ。映画や演劇、コンサートの情報を載せた月刊誌「ぴあ」。2011(平成23)年に休刊するまで愛好家に親しまれた▼大学生だったいわき市出身の矢内広さんが友人らと創刊した。当時、映画の上映館や時間、料金を一冊で伝える媒体はなかった。必要な情報を提供する人がいないなら、自分たちで発信しようと一念発起した。斬新な発想は、電話でチケットを予約販売する「チケットぴあ」につながる。サブカルチャーのけん引役。国内初のサービスだった▼福島高専を今春巣立った20代の女性2人はそれぞれ、いわき市で起業した。在学中に会社をつくった一人は中小企業を紹介する動画を作り、若い人材の確保を後押しする。もう一人は飲食店などの情報をSNSで発信し、経営を支える。地域の課題に商機を見いだす。今風に言うなら「ゼブラ精神」に満ちる▼2人は困難にめげず、後輩の手本になって道を開いてほしい。エールを込めて郷土の先輩起業家の言葉を贈る。〈不可能という名の大きな岩は、信念を持って押していると手伝ってくれる人が現れ、やがて動く〉。岩の跡地は若々しい開拓者を待っている。<2024・7・2>