にしおかすみこ、認知症の母・ダウン症の姉・酔っぱらいの父と暮らす家で寝坊した話

AI要約
にしおかすみこさんが毎日5時に起きて同居する家族の世話をしている。ある日、寝坊して仕事に遅れそうになるが、間に合うことがわかる。母に怒られながらも急いで支度をし、家を出る。
にしおかすみこ、認知症の母・ダウン症の姉・酔っぱらいの父と暮らす家で寝坊した話

 みなさんは毎朝何時に起きているだろうか。

 NHK文化研究所による2020年の世論調査によると、朝6時に起きている割合が一番多いのは50代、60代の女性なのだという。国民全体では半数以上が寝ているが、6割が起きているという結果になっている。

 認知症の母、ダウン症の姉、酔っぱらいの父と同居しているにしおかすみこさん。

にしおかさんが母の「異変」に気づいたのは2020年のコロナ禍。久々に実家に帰ったにしおかさんが「ゴミ屋敷のような」家と、様相が変わった母を見た。元看護士で家の大黒柱の母が同じことを繰り返したり「頭かち割って死んでやる!」と言い出したりしたのだ。

 それから同居を決め、2024年で4年になる。1年前のことを綴っている連載「ポンコツ一家」(毎月20日更新)が始まったのは2021年9月20日。連載が大きな話題を呼び、13回の連載と5編の書きおろしを加えた書籍『ポンコツ一家』には「実は我が家も同じです」「にしおかさん頑張って!」と共感の声が多数寄せられた。

 そんなにしおかさんの起床時間は5時。先の調査で言えば国民の多くが寝ている時間に起き、毎日3人分のご飯を作り置きしている。しかし人間、どうにもならないときもあるものだ。寝坊した日のにしおかさんはどうしたのか。

 2023年5月某日、朝5時半。

iPhoneを握りしめた状態で目を覚ます。……はっ……寝坊。やってしまったか。指先から血の気が引いていくのを感じながら、画面を見る。二度寝防止でアラームを何個もセットした最後ので起きている。ということは? 今日は? ……都内で仕事だ……まだ間に合う! ベッドから跳ね起き大急ぎで支度を始めると、階下から母の音が聞こえる。

シュッ、シュッ、シュッ、シュッ「クソっ」。

パタン、パタン、パタン、パタン「うるさいっ」を繰り返している。何だろう? 

 そして「すみ! ちょっと!」と張り上げた声に呼ばれる。今はそれどころではない。

何度も名前を連呼される中、自室でバタバタとアイロンをかけておいた服を着て(ナイス昨日の私! )、数分で洗顔とベースメイクを終わらせ(イイネ! あとは現場で! )、中身を整えておいたバッグを持ち(よし100点! )と、30~40点の私が階段を駆け下りる。

 途中、姉と父のイビキを背中で聞き、よくこの騒々しさで寝ていられるなと思いながら、玄関で待ち構えている母と目があう。怒り心頭顔だ。

「ねえ! 何度も呼んでるの! 返事くらいしてよ! さっきからどう歩いても! ママの! 自分のスリッパの音がうるさくてイライラするってことは、まだ耳がいいってことかねえ!!」と。何だそのネガティブなのかポジティブなのかわからない発言は。

 「耳いいよ。ちょっと急いでる。遅刻しちゃう」と返しながら靴を履き玄関ドアを開ける。

後ろから母が「バス? バスだとバス停まで歩く時間とバスをバス停で待つ時間とでバスでは間に合わないよ」と。バス多めの早口言葉みたいだが、その通りだ。