猫のふみふみ、肉球によるアイマッサージ… 疲れた社会人の心も体も癒してくれるのは白猫の店主!?『ねこのマッサージ屋さん』【書評】

AI要約

『ねこのマッサージ屋さん』は、体と心を同時に癒すことを実現するお店を舞台にした物語。癒しを求めて訪れるサラリーマンと白猫の店主とのほっこりとした日常が描かれている。

作者の猫愛が作品に表れており、猫のリアルな描写が魅力的。店主や研修生の愛らしい姿も読み手を和ませる。

読み終えるころには、心の凝りが解けてリラックスできる読むタイプのマッサージとして楽しめる作品。

猫のふみふみ、肉球によるアイマッサージ… 疲れた社会人の心も体も癒してくれるのは白猫の店主!?『ねこのマッサージ屋さん』【書評】

 私はしばしばマッサージに行く。凝った体をほぐしてくれることで癒されるが、メンタルの不調はマッサージだけではなかなかほぐれないものである。けれど、出来ることならば、体も心も同時に癒されたい。

 そんな欲張りな願いを叶えてくれるのが『ねこのマッサージ屋さん』(久川はる/オーバーラップ)。

 日々の仕事に疲弊しボロボロになっているサラリーマン・猫山が店を訪れるところから物語が始まる。白猫の店主が出迎え、全身を患者の体に乗せて足でフミフミしながらのマッサージ。その様子を見ていると、猫カフェに行って猫に触れた時の柔らかさや温かさを思い出して堪らなくなる。真剣で仕事熱心な猫だが、猫山へのアドバイス中に寝てしまったり、「今日は店主さんをマッサージさせて欲しい」と頼まれ撫でられた際に気持ちよさからゴロゴロと喉を鳴らしたりと時折見せる猫らしさにも癒される。

 作者の久川はる先生は実際に猫を飼っており、エッセイ漫画『愛されたがりの白猫ミコさん』でも溢れ出る猫愛が伝わってくる。猫の描写にリアリティがあるのも、身近で常に観察しているからなのだろう。作中での猫への愛情が感じられるのも頷ける。

 ちなみに作中に登場するのは猫山と店主だけではない。ある日猫山が、店主を自分の会社へ出稼ぎに行くよう誘ったことで、猫山以外の人物も登場するようになる。ユニークな同僚達の様子に加え、初めは拒否反応を示していた部長が店主の施術(?)に魅了されていく姿に思わず笑みが溢れてしまう。特に職場での肉球によるアイマッサージが行われるシーンは、普段PCやスマホで目を酷使している身としては本当に存在してほしいと心の底から羨ましく感じた。

 また、研修生の可愛い子猫3匹も一人前のマッサージ師になるべく奮闘しているのでそちらも温かい目で見守ってほしい。

 本作は読むタイプのマッサージといっても過言ではない。読み終えた頃には心の凝りがほぐれてリラックスできるはずだ。

文=ネゴト / 花