人間関係を重視し、仲間意識を重視するのは不安の裏返し【科学が証明!ストレス解消法】

AI要約

日本人は人間関係を重視し、中間的な回答をする傾向が強い国民性を持つ。

親和欲求という人間の基本的欲求が強く、他人と一緒にいることから安らぎを得る傾向がある。

心理学的実験からも、不安が強いほど誰かと一緒にいたいという気持ちが強まることが示されている。

人間関係を重視し、仲間意識を重視するのは不安の裏返し【科学が証明!ストレス解消法】

【科学が証明!ストレス解消法】#183

 世界各国と比較したとき、日本人の特徴とは何でしょうか。統計数理研究所が行った国際的な比較調査を調べると興味深いことが記されています。

 日本人の最も顕著な特徴──それは人間関係を重視し、中間的な回答をする。つまり、曖昧な答えを言う傾向が強かったそうです。また、他国と比較すると、次のような傾向があることも分かったといいます。

「生活においては、知人友人が極めて重要である」「仕事をするときは、『仕事はできるが、他人の事情や心配事に無関心な人』よりも、『仕事はあまりできなくても、他人と仲が良く、何かと頼りになる人』が望ましい」「物事を決めるときは、『一定の原則に従うことを重視する人』よりも、『他人との調和を図ることに重点を置く人』が好ましい」「自分の上司は面倒見の良い人が望ましく、同僚としては気の合った人たちと働くことを望む」

 このように日本人は、とにかく人間関係を大事にする国民性だということが分かると思います。人間関係を大事にするといえば聞こえはいいですが、先の4つの傾向を見るに、“出る杭は打つ”ともいえるので一長一短。曖昧な回答をしたり、どちらともつかないグレーな発言をするのも、人間関係を調整するため。良いか悪いかは別にして、衝突を避けるために、あれこれと考えるのが日本人の特徴というわけです。

 人間の基本的欲求の中には、「親和欲求」と呼ばれる、誰かと一緒にいたいと思う気持ちが備わっています。家族、友達、交際相手など心を許せる人たちと一緒にいると安らぎを覚えるのは、この親和欲求によるものなのですが、協調を好む日本人は親和欲求が強いとも言い換えられるかもしれません。

 心理学者のシャクターが行った「電気ショックを与える」という実験(1959年)は、親和欲求を知る上でとても興味深い結果を報告しています。

 実験は、「電気ショックはあくまで生理的反応を測定するため」と被験者に説明した上で、「電気ショックはかなり不快で苦痛を伴うと説明したグループA」と、「電気ショックは軽いもので苦痛を伴わないと説明したグループB」の2つのグループに分けて行いました。

 そして、実験開始前に意図的に10分間待機するように指示し、「1人で待つ」か「複数で待つ」かを選択させました。その結果、グループAの62.5%が「誰かと一緒に待ちたい」と答え、グループBでは33%が「誰かと一緒に待ちたい」と答えたといいます。つまり、不安が強いほど誰かと一緒にいたいという気持ちが強くなることが示されたのです。

 日本人は人間関係を重視し、仲間意識を強く持ちたがります。しかし、それは不安の裏返しともいえるのです。そのため自信があるときは、誰かに流されずに自分の判断を尊重し、意志を強く持つように。親和欲求が働けば、自分の判断を変えてでも安らぎを求めてしまいます。親和欲求とは上手に向き合わなければいけません。

(堀田秀吾/明治大学教授、言語学者)