綾瀬はるかさんスペシャルインタビュー「今、新人のような気持ちでいます」

AI要約

綾瀬さんの存在感や美しさ、そして主演映画『ルート29』における演技について

役作りや自分の年齢について考える綾瀬さんの姿勢

現在のテーマである「気持ちの切り替え」について

綾瀬はるかさんスペシャルインタビュー「今、新人のような気持ちでいます」

俳優、存在感、自然体、透明感、そして美しさ…。「まごうことなき」をつけると、綾瀬さんになる。エレガントで可憐(かれん)で、強くて儚(はかな)くて。でも本人は、その合間をたゆたうように悩み、戸惑いながらも、自らの心をしっかりと見つめ続ける。まっすぐな眼差しが魅せる素顔と多くのヒロイン像は、永遠の憧れ。

モノクロ写真は色の情報がない分、被写体の本質や美しさを浮き彫りにする。あどけなさも艶っぽさも、強さも柔らかさも。そして、肌のみずみずしさも。来年40歳を迎える綾瀬さんの麗しさに、私たちが惹かれ続ける理由を改めて感じさせられた。

“そぎ落とす”ことが必要な年頃なのかもしれない

「周りに言われて最近、自分の年齢を実感しています(笑)。とはいえ、いまだにクランクインの度に緊張しますし、年々、いろいろなことが重くなっている気がします。経験が増える程、『こうしなくては』と自分にプレッシャーをかけてしまうところもあって。日々自分との闘いですが、なるようにできているんだと考え、全力投球した後は“委ねる”ことを覚えると気持ちが楽になってきました。実は今、改めて新人みたいな気持ちでいるんです」

そんな思いと共に臨んだ主演映画『ルート29』は、綾瀬さん演じる、人と交わらずに生きている清掃員・のり子が少女・ハルと旅をする中で、心に感情が満ちていくロードムービー。スクリーンにはボサボサヘアでほぼすっぴんの、キラキラしていない綾瀬さんがいた。「演じながら、『人は生きて、どこへ行くのだろう』と考え、人と人は些細なことでも強くつながれることを感じるシーンに癒されました。観てくださる方がどこか自分ごとに感じてもらえるところがあるとうれしいですね」

現在と過去、現実と妄想、生と死などがシームレスにつながっているような幻想的な世界観に触れると、寄り道しているうちに疲れた頭の中や生きづらさが軽くなるような感覚を覚える。

のり子は台詞(せりふ)も少なく、表情も変わらない難役だった。特に、「演じないでください」という、森井勇佑監督からのリクエストに最初は戸惑った。

「監督は、カメラが回るときも『自分が感じたら始めてください』と言ってくださったりと、演じる側の心の機微を大切にしてくださる方でとてもありがたかったです。ただ、『台詞を伝えようとしないで』というのが最初は難しくて。頭の中には次の台詞が浮かんでくるし、どうしても伝えようとしてしまうんです。お芝居をそぎ落としていくという作業に戸惑いもありましたが、今までと同じやり方だと、のり子の心の隙間や心の宇宙が表現できない。準備してきたことすべてを捨てて役を生きることを、改めて実感できた気がします」

そうして生まれた芝居に、俳優の仕事を始めた頃の自身が蘇(よみがえ)った。

「のり子を演じる自分が、10代で撮影したショートフィルム『たべるきしない』の感じに似ているんです。経験もないから、自分の中からわいてくるものを頼りに演じるしかできなかった頃を思い出して、初心に戻れた気がしました。同時に、培ってきたものを一度捨てることで新たな表現が生まれたり、新しい自分に出会えることがあるのだな、と。同じ年の監督は『(撮影当時の)38歳は人生の曲がり角だ』とおっしゃっていましたが、そういう時期なのかもしれませんね」

学んできた知識や経験、価値観を一度捨てて新しく学び直すアンラーニングは、人生でも美容でも大切なことかもしれない。とはいえ、生きてきた分だけの常識や固定観念を捨てることは、ときに難しいことも。

「ま、いっか」で前を向く。今は誰かのための方が頑張れる

「私はわりと思い込みに捕らわれがちで、自分の考えに確信をもてず決断できないこともあるので、本音がちゃんとわかるように時々立ち止まって考えたり、心についての本を読んで視野を広くもつようにしています。それでも、気持ちを言語化することはずっと苦手です。思っていることを素直に書く練習をしたりもするのですが、相手がどう受けとるかなと考え始めると、なかなか伝えられずに終わってしまうことも。ほかの俳優さんのインタビューで素敵な言葉に触れると自分の拙さに落ち込みます。でも最終的には、『ま、いっか』で締めくくるんです(笑)。私なりにベストを尽くすことに集中しよう、と」

わからないこと、できないことを受け入れながら前を向く綾瀬さんの最近のテーマは、「気持ちの切り替え」。きっかけは、パリ五輪の男子サッカーの、物議を醸した準々決勝だった。

「オフサイドで日本のゴールが取り消しになったとき、私は判定に対してムカムカしているのに、誰よりも思うところがあるはずの選手の皆さんはプレーに集中されていて。終わったことは忘れて目の前のことに集中できるかどうかでパフォーマンスの差は出てきますよね。私はうまくできなかった自分に気持ちが行きがちなので、気持ちをぱっと切り替える方法を身につけたいです」

考えすぎるときは、キッチンを磨いたり、洗濯をしたり、好きな香りでリフレッシュをしたりと、意識を別のところに向ける。料理、友人とのおしゃべり、お風呂、Netflix、“ゴムパンツをはいてゴロ寝”…で、自分の機嫌をとる。そうしてマインドを健やかに保つことも美しい肌と心を育む。そんな綾瀬さんが考える大人の美しさは、「愛のある人」。「年齢と共に、自分よりも誰かのためにと思う方が頑張れるようになってきました。私の母のように家族のために常にパワフルに頑張って、愛を渡せる人でありたいですね。そのためにも楽しんだり、傷ついたりしながら、自分の中の感受性の実を強く、優しく、大きく育てていきたい。その実の大きさが大人の美しさである気がしています。少し前から、10代の頃の無条件にポジティブだった頃に戻れたような感覚があるんです。卵の殻が割れて、素の私が出てきたような。それもこの年齢だからなのかな。不安に思う自分さえも面白がりながら、愛のある大人を目指していきたいです」