2000を超えるケースを経験してわかった「認知症の人」が本当に安心する「声かけ」たった1つのポイント

AI要約

認知症の人は、現実と一致しない反応に混乱し、周囲とのコミュニケーションに困難を感じる。

不安を安心に変えるためには、嬉しくなる言葉をかけることが効果的であり、引き算の世界に合わせたアプローチが重要。

具体的なケースを挙げながら、認知症の人とのコミュニケーションにおける適切な言葉かけの重要性を示す。

2000を超えるケースを経験してわかった「認知症の人」が本当に安心する「声かけ」たった1つのポイント

認知症の人は、自分の見ている現実と一致しない反応が周囲から返ってくると、「否定された」と思って混乱してしまいます。結果、周囲とかみ合わなかったり、衝突したりする機会が増えますが、これが認知症の人の「不安材料」となります。

この不安材料を上手に「安心材料」に変えてあげること。それが、本人の困りごとを解決し、家族の悩みを解消する最もいい方法です。ではどうすれば不安を安心に変えられるのでしょう?

それには、「不安を忘れるくらい嬉しくなる言葉をかける」のが効果的です。本人だけでなく介護者も、みんなが笑顔で過ごせるようになる言葉かけや接し方を、2000を超えるケースに対応した経験がある著者が解説。『認知症の人がパッと笑顔になる言葉かけ』より紹介します。

私たちは普段、記憶をためる「足し算の世界」に生きています。いっぽう、忘れる病気を抱えている認知症の人は、記憶をなくす「引き算の世界」に入ったと言えるでしょう。そのため、認知症の人は「足し算」基準では“何もできない人”“やっかいな人”というレッテルを貼られがちです。介護者が「言葉をかけにくい」と感じるのも、無理はありません。

そこで、困ったときは思い切って「足し算」の発想を捨て、認知症の人がいる「引き算の世界」に合わせた言葉かけをしてみてください。ある認知症の男性のケースを例にとって具体的にご説明しましょう。

彼はつい5分前にご飯を食べ終わったのに、「食べてない。メシはまだか」と言い、妻をイラッとさせました。これは、「忘れる」という認知症の症状によって引き起こされていることですが、本人にとっては“ご飯を食べていない”ことが事実なのです。

食べた記憶が失われ、脳が「食べていない」と判断しているからです。だからもし、介護者が「えっ? さっき食べたばかりじゃない!」と、「足し算」で反応すると、この男性は不安になったり、怒ったりするかもしれません。