畑や田んぼの土壌に生息する菌が発電 メンテ不要で低コスト、「微生物燃料電池」の可能性

AI要約

四国電力と東京農工大がみかん畑で微生物燃料電池の実証実験を開始

「発電菌」を利用して電力を発生し、スマート農業や防災分野で活用を目指す

実験では土壌に存在する微生物を活用し、効率的な発電システムを開発

畑や田んぼの土壌に生息する菌が発電 メンテ不要で低コスト、「微生物燃料電池」の可能性

有機物を分解する際に電子を放出する「発電菌」の働きを利用した微生物燃料電池の実用化に向け、四国電力と東京農工大が愛媛県八幡浜市のみかん畑で実証実験を開始した。現地の土を用いた微生物燃料電池を農園内に埋設、継続的に発電できるかどうかを確認する。将来的には気温や水分量を計測するスマート農業の推進や防災分野での活用を目指す。

■土壌にいる「発電菌」

「発電菌」とは、ジオバクター菌やシュワネラ菌など、電子を放出する性質を持つ微生物の総称。畑や田などあらゆる土壌の中に生息しているという。その存在は約100年前から確認されていたが、取り出せる電力の少なさや活用方法に課題があり、いまだ商業利用には至っていない。

東京農工大の松村圭祐特任助教らのグループは、安価で設置場所を選ばない一方、供給力が低いという微生物燃料電池の活用方法を模索。使用電力が比較的少ない各種センサーを使って農地の見回り作業などの負担を軽減する「スマート農業」での利用を目指すことにした。

松村特任助教らは長時間発電し続けた電力をためて一気に放出し、機器を動かすのに必要な電力量をまかなうシステムを開発。実験室で実際に温度計や湿度計などの電子機器を動かし、そのデータを自動収集することに成功した。

■四国電力が連携、みかん畑で実証実験

同大のこうした活動を聞きつけた四国電力は、自社で行っている農業分野での活用や、防災分野など発展性が見込めることから連携を打診。同社のグループでみかん栽培を手がける愛媛県八幡浜市のみかん畑で実証実験を行うことになった。松村特任助教は「みかん畑での実証実験はおそらく全国初」という。

実験で使う電池は容積約350立方センチの箱状で、中に現地で採取した土と電極が入っている。

発電効率を高めるため、負の電極周辺は常に水に浸っており正の電極周辺は常に乾いた状態を保つ構造。発電菌が常時活動できるよう外気や水も取り込めるようになっており、1基あたり1時間で約10マイクロワットを発電する。

この日は電池6箱を約30センチの地中に埋設。電池には電圧計を取り付けており1・8ボルトの電圧を確認した。