がん化学療法の終了を報告…英キャサリン妃の気になる病状(中川恵一)

AI要約

英王室キャサリン妃ががん治療の化学療法を終え、完全回復への道のりはまだ遠いと語っている。

卵巣がんや子宮体がんの可能性がある中、その背景や治療法について解説されている。

キャサリン妃の状況から、卵巣がんや子宮体がんの可能性が高いと考えられているが、詳細は非公表。

がん化学療法の終了を報告…英キャサリン妃の気になる病状(中川恵一)

【Dr.中川 がんサバイバーの知恵】

 英王室キャサリン妃のビデオメッセージが話題です。「ようやく(がん治療の)化学療法を終えることができて、言葉にできないほどホッとしています」と語り、ウィリアム皇太子や3人の子供たちと過ごすシーンも見られますが、「完全回復への道のりは遠い」とも語っています。

 キャサリン妃に健康問題が浮上したのは今年1月。ロンドンの病院で腹部の手術を受けていて、このときはがんではないという報道でしたが、その後、がんであることが判明し、化学療法を受けていることが報じられました。

 がんの部位も進行度も公表されていません。一連の報道を見ていると、卵巣がんか子宮体がんかもしれません。あくまでも推測ですから断定はできませんが、ここから先は一般論としてお話ししましょう。

 卵巣がんは乳がんと同様に少子化の影響で増加傾向です。女性ホルモンは卵巣や子宮、乳腺などの成長には重要なホルモンですが、過剰に作用するとがん化させやすいことが分かっています。少子化では生理が続き、その分女性ホルモンの影響も続くので、多子社会だった昔の女性に比べてこれらのがんが増えているのです。

 もう一つは、子宮内膜症があります。女性の10人に1人が患うありふれた病気で、子宮内膜の細胞が子宮の外で増殖し、生理のときに出血を起こすのです。それが卵巣で起こるのがチョコレート嚢胞。卵巣内部にたまった生理の出血が古くなると、溶けたチョコレートのようになることからこう呼ばれます。

 チョコレート嚢胞は卵巣がんのリスクです。卵巣がんの合併率は、40代で4%という報告もあり、嚢胞が10センチ以上になるとより合併率は高まります。

 卵巣がんは50代が発症のピークですが、40歳から増えること。卵巣にできる腫瘍は、良性、良性と悪性の中間的な境界悪性、悪性の3つに分けられ、良性が85%程度であること。診断するには、まず腹部手術で病巣を切除して病理検査が必要なこと。卵巣がんは婦人科系のがんの中では比較的抗がん剤が効きやすく、治療は手術と抗がん剤を組み合わせるのが基本であること。

 キャサリン妃は42歳。がんの専門医が一連の報道に触れ、こうした事情を踏まえると、卵巣がんの可能性はあると思われます。子宮体がんも、開腹による大がかりな手術と化学療法が治療の中心になるケースが多く、この可能性もあるでしょう。一方、子宮頚がんは、欧米は放射線を使うことが多いのに、放射線の話がまったく出ていない点で、可能性は少ないと思います。

(中川恵一/東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授)