40代でも危険…要介護リスクを上げる「ロコモティブシンドローム」4つの困難を見逃すな

AI要約

ロコモティブシンドローム(ロコモ)は足腰の弱さによる移動機能の低下で、40代以上にも多く見られるリスク要因である。

ロコモが進行すると転倒や骨折のリスクが高まり、整形外科手術の原因の上位に位置する。

ロコモサインの4つの困難を見極め、適切な対策や運動を行うことが重要である。

40代でも危険…要介護リスクを上げる「ロコモティブシンドローム」4つの困難を見逃すな

 将来、要介護のリスクが高くなる「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」。国内の40代以上のロコモ人口は4660万人と推計され、糖尿病(疑われる人を含む)や高血圧の患者数より多い。「40代以上」が示すように、ロコモは高齢者だけの問題ではない。

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 ロコモとは、よくある言い回しを用いるなら「足腰が弱って、立つ・歩く・作業をするなどに支障が生じる」こと(下記①)。

「膝が痛くて歩くのがつらい」「トロトロしたスピードでしか歩けない」「よろけた時に体を支えられない」などは、ロコモが進行している可能性がある。この先、リスクが高くなるのは転倒や骨折だ。

 日本整形外科学会によると、整形外科手術の1~5位(2022年度年次報告書)は骨粗しょう症による骨折、または変形性膝関節症に対するもので、要支援・要介護の原因の24.8%を運動器障害(転倒・骨折、関節障害、脊髄損傷)が占める。これは認知症(17.6%)を上回る。

 つまり、生き生きと好きなように動いて人生を全うしたければ、ロコモ対策が必須なのだ。

「よく聞かれる質問として、『年を取ると、みんな足腰が弱くなる?』というものがあります」

 こう言うのは、埼玉県立大学保健医療福祉学部准教授の山田恵子医師。これはイエスでもあり、ノーでもあると続ける。

「年を取ると確かに足腰が弱りますが、人によってかなり個人差があります。年齢と歩行機能を調べた論文に対し、集団の平均値では加齢とともに歩行機能が徐々に落ち、70代で急激に低下します。一方、個人の低下に注目すると、ある人は80代までほとんど低下しない、ある人は65歳くらいで一気に、ある人は50代で少しずつ低下が速くなり80を越えたらもっと悪くなる。『70代で歩行機能が低下するから対策を』ではなく、悪くなり始めのサインを見分けて、その人に合ったタイミングで対策を講じる必要があるのです」

■1つでも該当したら要注意

 日本整形外科学会では、20代以上の男女1万人を対象に、体の状態や生活状況に関する調査を実施し、整形外科への通院患者を対象とした先行研究とあわせて分析した。結果、ロコモになる前の最初の兆候「ロコモサイン」が初めて明らかになった。それは「4つの困難」だ。

「『階段の上り下り』『急ぎ足で歩く』『休まず歩き続ける』『スポーツや踊り(ジョギング、水泳、ゲートボール、ダンスなど)』が困難ということです。これらの活動性に関する4つの困難のうち1つでも該当するなら注意が必要です」(山田医師=以下同)

 4つの困難がロコモに深く関係していることは、別の研究でも示されている。千葉大学・山口智志医師、大宮シティクリニック・中川良医師が行っている1万995人対象の進行中の研究では、2016年から22年の人間ドックでのロコモ25(下記②)の自然経過を調査。すると、ロコモが悪化した人では4つの困難が悪化、逆に軽快した人では4つの困難も軽快していた。

「ロコモサインの改善で、ロコモを減らせることが期待できます」

 では、何をすべきか?

 4つの困難で、その理由がかかりつけ医で判明している場合は治療が必須。理由がわからず痛みがある場合は、整形外科を受診すべきだ。休まず歩き続けることが困難なケースでは、運動器疾患のほか、動脈硬化で足の血管が詰まる閉塞性動脈硬化症や、心臓や肺が原因で息切れがひどい場合もある。症状によっては循環器内科、呼吸器内科の受診となる。

 困難が生じる病気がなく、痛みもないなら、効果的な運動の一つとしてスクワットがある。膝がつま先より出ないように、膝が足の人さし指の方向を向くように注意し、5回を1セット、1日3セット程度行う。体幹や下肢の筋力を鍛えるのに有効だ。

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①ロコモの定義は、運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態。ロコモ度を測定するものとして、日本整形外科学会が2013年に作成した「ロコモ度テスト」がある。ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイトでチェックできる(https://locomo-joa.jp/check/test)。

②体の状態、生活状況からロコモ度を測定する25の質問。「ロコモ度テスト」に含まれる。