学習塾、習い事に通わせるよりも効果的…「頭のいい子」が育つ家庭に共通する"幼児期のある習慣"

AI要約

子供の学習力を伸ばすには家庭での学習が最適だ。幼少期から家庭での生活が脳を刺激し、子どもの得意なことを伸ばすのに最適な場所とされる。家庭でのルーティンや言動が子供の「おりこうさんの脳」や「こころの脳」を育てる重要な刺激となる。

詰め込み式の学習は効果があるが、勉強の喜びや自発的な学びを育むことが難しいとされる。漢字や知識を覚えることで「学力」は身につくが、自身の文章や思考に織り込むことができなければ「学習力」は育たない。

学校での学力を学習力に昇華させるためには家庭での学習が重要とされる。例えば、漢字を学ぶ際に世界を広げる視点や質問を通じて、子供の興味や自発的な学びを促す方法が提案されている。

「頭のいい子」に育てるにはどうすればいいのか。小児科医の成田奈緒子さんは「子供の学習力を伸ばすには家庭での学習が最適だ。子どもに習い事をさせる場合は、親も一緒に参加して楽しめるものがいい」という――。(第3回)

 ※本稿は、成田奈緒子『子どもの隠れた力を引き出す最高の受験戦略 中学受験から医学部まで突破した科学的な脳育法』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

■過度な習い事は子どもの成長を妨げる

 少子化や共働き家庭の増加により、子ども一人当たりの教育費は増加傾向にあります。

 ひとりっ子ともなれば、そこに向けられる情熱は「絶対に失敗できない」という強迫観念と表裏一体になり、お金や時間が惜しみなく注がれます。わが子により良い教育を受けさせようと、幼少期から週5日、毎日違う習い事に通わせる親も珍しくありません。中には1日2件の習い事をはしごするなど、忙しい毎日を送っている子どももいます。

 しかし、子どもの脳の発達を考えるのであれば、家庭生活そのものが脳を最も刺激し、子どもの得意なことを伸ばすのに最適な場所だと言えます。幼少期から発達する「からだの脳」に加え、小学生以降は「おりこうさんの脳」が本格的に、そして「こころの脳」も育ち始めます。

 家庭では、毎日のルーティンの中で、同じメンバー間で決まった言動が繰り返し行われますが、これが子どもの「おりこうさんの脳」や「こころの脳」を育てる重要な刺激となります。親の言葉や表情、物事の捉え方や子どもとの接し方などが、学習塾や習い事よりもずっと大きい部分で子どもの脳育てに影響を与えるのです。

■「学力」だけではなく「学習力」も身につけるべき

 私は勉強とは本来、楽しいものだと思っています。教科書に書かれた知識を丸暗記するのではなく、自分で論理や思考をめぐらせながら、興味がわいたことを一つずつ学んでいく過程に喜びを感じます。自分の中に一つひとつの点として置かれていた知識が、ある時つながり、線となって広がった瞬間の世界がひらける感動は、何物にも代えがたいものです。

 ですから、個人的には試験対策に見られるような詰め込み式の学習は好きではありませんが、だからといって脳科学的に意味がないわけではありません。脳のシナプスをつくるためには、繰り返しの刺激が重要ですから、知識を記憶するという点では効果があります。

 しかし、それで勉強の喜びに触れることができるのか、子どもが自ら学ぼうとする意欲を育てることができるのかは甚だ疑問です。詰め込み式の学習では、「学力」は身につきます。学力は、「おりこうさんの脳」を活性化させ、新たな知識や情報を得ることで育っていきます。

 例えば、漢字ドリルを使って一生懸命、漢字を書いて覚えれば「おりこうさんの脳」が働き、知識は身につきます。しかし、たくさんの漢字や四字熟語を覚えても、それを自身の文章の中に織り込むことができなければ、論理や思考は育ちません。その人ならではの論理や思考は独創性と呼ばれ、「こころの脳」の働きによって育まれます。

 人は独創性を発揮できた時に喜びを感じ、「もっと勉強して新しい知識を身につけたい」と自然に思えるようになります。この脳の働きを、私は「学力」と区別して「学習力」と呼んでいます。

■学習力を伸ばすには家庭での学習が最適

 残念ながら今の教育制度は、子どもの「学力」を伸ばしてもらうことはできても、「学習力」を育ててもらうことはあまり期待できません。そこで必要なのが、家庭での学習です。生活こそが子どもの「学習力」を伸ばす場だと考えます。

 では、学校で習った「学力」を「学習力」に昇華させるには、どのような方法があるでしょうか。例えば、学校で習った漢字を何回もノートに書き写す代わりに、一つの漢字をピックアップし、その字にまつわる世界を広げていきます。では問題です。あなたは「本」という漢字で、どれだけ世界を広げられるでしょうか?

 次のような質問を、子どもに投げかけてみるのも一つの方法です。

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親「本という漢字は、木という漢字と似ているね。なんでだろう?」

子「木の葉っぱみたいにページがいっぱいあるから? 昔の人は木に文字を書いていたのかな?」

親「なるほど、面白い視点だね。少なくとも石には文字を書いていたという証拠が残っているよ。ロゼッタ・ストーンといって、大英博物館に展示されているよ」

子「へえ、本物を見てみたいな。その博物館はどこにあるの?」

親「イギリスのロンドンという街にあるよ。一緒に地図で調べてみようか」

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